第123話 最多記録、一挙更新!

 気づくと陽が大分傾いている

 時計を見ると午後4時30分。

 リビングから複数人の気配がするのでもう皆帰ってきているのだろう。

 俺も復習が一通り終わったので机の上を片付け、リビングに向かう。


 扉を開けた途端、俺は甘い香りに襲われた。

 しかも妙に部屋の中が涼しい。


 そしてリビングにはいつもの新旧学生会幹部ご一同が勢揃いしている。

 どうも何か作業していたのを片付けている様子だ。

 お湯入りボールとかキッチンペーパーの箱とか色々とテーブル上に残っている。


「惜しいな、あと3分待ってくれれば完璧だったのだが」

 Tシャツホットパンツにエプロン姿の奈津希さんがそう言って俺の方を見た。

 何をやっていたかなんて甘い匂いですぐわかる。

 間違いなくチョコレートの匂いだ。


「修も出世したわよね。こんなにたくさんの女の子から手作りチョコを作って貰えるなんて」


「去年は由香里姉からの1個だけだったけどな」

 その1個は味について大変コメントしにくい代物だった。

 チョコレートとはこんな苦味とエグみをもった代物だったのか。

 そう再認識してしまう程に。


「今年は講師の先生を招いて、材料配分から温度管理までしっかりやったから美味しいわよ」

 講師の先生とは奈津希さんの事だろう。

 確かに魔法で温度管理は自在だし普段の料理の腕から見ても上手そうだ。


「さて、まずは私達からだな」

「いつもお世話になっていますからね」

 と鈴懸台先輩と月見野先輩。


「すみません、ありがとうございます」

 2人からはスマホ大のピンクのラッピング済み物体を頂く。


「次は私でしょうか」

 風遊美さんのは少し高さのある箱。


「じゃあ私のも貰ってくださいれす」

 ジェニーからは逆に平たい文庫本くらいの箱だ。


「今年の私のは自信作だぞ」

 と由香里姉のはファッション雑誌大の平たくて大きい箱。


「私のです」

 香緒里ちゃんのは風遊美さんと同じ高さのある箱だった。


「さて、どうせならここで全部開封して中身を見てみない」

「いいね。ついでに少しずつ試食でも」

 とは由香里姉と鈴懸台先輩。

 確かにこの量のチョコは俺一人では食べ切れない。


「あれ、奈津希はチョコ無いの」

 風遊美さんが気づく。

 実は俺も気になっていたのだ。

 奈津希さんからはまだチョコレートを貰っていない。


「後でわかるさ。それより修の貰ったチョコレートの見分会やろうぜ。修宛てじゃないけど僕のも放出するから」

 そう言って奈津希さんはどさどさと十数個のチョコレートを出す。

 どう見ても今俺が貰った分より遥かに多い。


「ちなみにこれが今日僕がもらった分。一緒に食べようぜ」

 まあ、確かに奈津希さんはボーイッシュだし見た目もいいし女の子受けしそうだ。

 彼女がいた時期もあると聞いているし。


「いいのこれ」


「今は特定の彼女はいないしね。一応貰った子はちゃんと控えているしホワイトデーには手作りクッキーでもお返しするさ。その時は手伝ってやるから修も一緒に作ろうぜ」

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