第120話 帰還

 目覚めると例の病院の個室。


 まわりに学生会新旧幹部一同が勢揃いしている。


「おかえり」

「ただいま」

 俺は由香里姉の挨拶に返答する。

 とたんに辺りが賑やかになった。


「よお、お目覚めの気分は?」

「意識ちゃんとあるよね」

「魔法で確認した結果では全て異常はありませんわ」


 色々な言葉が飛び交う中。

 ふと気づく。 

 隣に香緒里ちゃんがいない。


「香緒里ちゃんは」


「昼前に起きて精密検査を受けているわ。そろそろ解放されると思うけれど」

 由香里姉が答えてくれた。

 良かった。


 不意に腹が減ったような気がする。


「参考までに今、何時くらい」


「午後3時。1日後のね」


 思ったより時間が経っていたようだ。


「警察と自衛隊の現場検証があったり事情聴取を受けたり、教授会の方でも事情聴取をうけたりして大変だったのよ。ちなみに今日は襲撃の影響で休校」


「由香里さんには後で礼を言っとけよ」

 と奈津希さん。


「そんな状況でも結局昨日泊まり込んでずっと様子みていたんだから」


「妹と幼馴染の弟分が揃って倒れているんですもの。しょうがないじゃない」

 由香里姉はそういってそっぽを向く。

 昔からよくやる照れ隠しの時の表情だ。


「いずれにせよ、これで一段落ですかね」


「修君はこの後精密検査ですわ」

 風遊美さんがさらっと嫌な事実を告げる。


「脳の方も腕の件も両方で、退院は明日になるでしょうね」


「ただこれ以上襲われる心配はしなくていいようだ。証拠物件も多いし脱出した襲撃者の逃亡ルートは米軍と合同で完全追跡して証拠化して世界に公開済み。日本の政治にしては随分と迅速で思い切った行動だと思うけどな。

 既に世界中から某国非難の決議案がいくつも出ている。まあ外交上でどうにか出来なくとも、世界中から不興をかったし当分は動けないだろう。他にも色々障害は出てくるだろうし」

と奈津希さん。


 ふと廊下から足音が聞こえた。

 だんだん近づいてくる。

 そして足音の主は、扉から姿を見せた。


 彼女は起き上がっている俺を見つけ、小さな声だけどはっきりと俺に挨拶した。

「ありがとう。おかえりなさい」

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