第113話 強襲
貨物船は無事、港から出ていった。
でも奈津希さんに言わせると、まだまだ警戒は必要なんだそうだ。
「例によって某国漁船が大量に近海に来ているみたいだし。漁船に偽装した工作船が混じっている可能性も高いから注意した方がいい」
本土にいた頃の俺なら陰謀論と鼻で笑っていたろうが、何せこの前マンションが襲われたばかりなのだ。
だから油断はできない。
◇◇◇
今日は久しぶりに工房に来ている。
理由は簡単。
香緒里ちゃんのバネ加工のノルマが溜まってしまったからだ。
なので香緒里ちゃんが魔法をかけ、俺が処理済みのバネを整理し梱包しという作業を延々と続けている。
他にはジェニーが梱包を解いて処理前のバネを香緒里ちゃんに渡す係。
そして護衛担当として鈴懸台先輩が来ている。
他の学生会の面子は学生会室で書類整理中だ。
実情は脳筋の鈴懸台先輩が戦力外としてこっちに来たという感じ。
無論本人はそのことに気づいていない。
「それにしても暇だな。このパソコン、何か他にゲームが入っていないのかい」
「ネットに繋がっているから適当にWebで探して下さい」
俺の方は結構忙しいので口先対応させてもらう。
「そろそろ休憩しないれすか」
「そうですね。魔力が均一にかからなくなったら商品価値がないですしね」
香緒里ちゃんは手を止める。
ちなみに受注方式は11月にまた変更になり、規格品のバネ数種を予め用意して注文に応じて魔法をかける方式に変わった。
何でも大型のバネが通常動力潜水艦のエネルギー革新になるとの事で、ワッセナー・アレンジメントとやらに引っかかったからだそうだ。
それに同じ規格のバネに魔法をかける方が均一な商品としやすい事もある。
結果、今は月におおよそ300個、大体600万円の売上げというノルマ。
ちなみに常に完売し品薄状態、利益率も9割を超える。
香緒里ちゃんがマンション代を親に全額返還する日も遠くない。
全員が休憩場所である俺の工房の作業台近くに集合した時。
不意にジェニーの魔法が発動した。
「20人、車両の他にヘリ確認れす」
「学生会室へ逃げられるか」
「無理すね。間に合わないれす」
「他の役員には」
「伝達済れす」
俺はとっさに倉庫の電動シャッターのボタンを押す。
応援が来るまで籠城戦、というのが一番固い案だろう。
「いよいよ私の出番かな。腕がなるぜ」
鈴懸台先輩が愛剣クラウ・ソラスを抜き放つ。
俺も香緒里ちゃんのバックを借りて護身用改造エアガンを取り出した。
「香緒里ちゃんとジェニーは念のため下がって」
そう言った瞬間、激しい振動と爆風が俺達を襲った。
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