第111話 敵襲
例によってあっさり作った割にはすごく美味しい晩御飯を食べ、露天風呂の時間。
結構雨が降っているし風もあるのだが露天風呂好きには関係ないらしい。
俺は例のぬる湯。
香緒里ちゃんはいつもの樽湯。
ジェニーは寝湯で伸びていて、由香里姉と奈津希さんはメイン湯船で伸びている。
いつも通りの露天風呂。
そう、ここまでは。
不意に部屋の照明が切れる。
「ん、停電か」
そう思った時、いきなり頭の中にこのマンションの見取図が表示された。
この感覚は何度か憶えがある。
ジェニーの魔法だ。
「急いで、中へ入って服着てリビング集合よ」
その言葉から数瞬遅れて俺は事態を理解した。
敵襲の可能性が大。
慌てて自分の部屋に入り服を着る。
若干服が濡れたが気にしてはいられない。
窓の外を見て誰もいないのを確認して窓を閉め電動シャッターを下ろす。
そうして暗い中非常灯を頼りにリビングへ。
既に俺以外の全員が集合していた。
「不審なのはジェニーがピックアップした7人ね。外で待機している1人と非常階段経由3人、階段経由が3人」
その7人は俺の頭のなかに展開中の見取図に赤色で表示されている。
他のマンション内の住民等は俺達を含めて黄色表示。
「全員魔法持ちだ。ただそれ程怖い感じの魔力持ちはいない。ジェニー、敵の目標がここかどうかはわかるかい」
「害意があるのはわかるれすが、対象がここかまでは分からないす」
「害意があるのは確かなのね」
横では香緒里ちゃんがスマホを確認している。
「駄目、電話も携帯も通じなくなってます」
「どうする、仕掛ける?」
「その必要は無いよ」
奈津希さんが言い切った。
「何故ですか」
「ここのマンションにどれだけ怖い方々が住んでいるか、侵入者さんはご存知ないみたいだからさ」
奈津希さんがそう言った直後、非常階段側からの赤い光点の動きがが止まった。
「何せここは魔法特区、住んでいる方々はそれなりに自衛意識もあるし魔法の力もあるからね」
残った階段側の光点が非常階段へと進路を変える。
「あーあ、馬鹿だなあ」
「どういう事?」
由香里姉が質問。
「侵入者は何らかの障害にあった非常階段側の人員を回収しようとしたんだ。
でもその動きで階段側からの侵入者と非常階段側からの侵入者が同じ勢力だと証明してしまった。単に内階段を登るだけなら急用で○○号室に行きたかったと言抜けできたんだけどね。だからそのまま引き返せば犠牲は3人で済んだんだけどさ。残念」
奈津希さんがそう解説している間にも事態は進む。
非常階段で合流した6つの光点は一緒に動き始めたが、1階下まで降りた所で動きが止まった。
「さて、最後の一人はどう出るか。お、流石に逃げたな。賢明だね」
「その一人は捕まえることができないんですか」
香緒里ちゃんの質問に奈津希さんは肩をすくめてみせる。
「無理だね。多分仲間だという証拠すら持っていないだろ。動き的にも仲間だと証明できないしね。魔法による記憶の読み取り等は裁判ではいまだ証拠として無効だしさ」
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