第106話 奈津希さんの企み(1)
「あんまり修を虐めるなよ。困っているじゃないか」
「だって……」
奈津希さんはふっと息をついて、風遊美さんに話しかける。
「修が嘘をつくようなタイプに見えるか」
「そうは思いません。ですがお世辞くらいは……」
「なら、修はうまいお世辞を言える程器用なタイプに見えるか?」
「ごめんなさい。そうは見えません」
「なら答えは一つだろ」
「そうですね」
「ならこの件はこれで以上だ。あ、待てよ」
奈津希さんはにやりと笑う。
「風遊美、明日何か用事あるか?」
「うーん、特にないですね」
「修は」
「残念ながら無いですよ」
「なら明日、朝メシ食ってちょっとやりたい事がある」
何だろう。
「釣りじゃ無いですよね」
「これ以上釣っても冷蔵庫に入る場所がない。まあ楽しみにしてな」
奈津希さんの笑みが少し邪悪に見えるのは気のせいだろうか。
◇◇◇
次の日の午前8時、俺達は学校のグラウンドに来ていた。
奈津希さんの手にはおもちゃの刀のようなものが3本、抱えられている。
「ここで何をするんですか」
まあおもちゃの刀があるあたりで想像がつくのだが。
「見たとおり、チャンバラごっごさ」
そう言って奈津希さんは俺達におもちゃの刀を配る。
「この刀は柔らかいから顔面突きでもしない限り怪我はしない。これで身体の何処へでも一太刀入れれば勝ち、というシンプルなルールさ。
ただし、相手を怪我させない限り魔法使用可能。移動可能な範囲も野球場の内側の四角、つまりホームベースから1塁2塁3塁、ホームベースと結んだ四角の中だね」
「これって、魔法攻撃科の訓練ではないのでしょうか」
「訓練というよりは遊びだな。実戦だと魔法による直接攻撃禁止なんてまどろっこしい事はしないし。ただ怪我しないしルール的も簡単、見た目に勝敗がわかりやすい。という訳で」
だだーっと奈津希さんは走っていって距離を取る。
「最初だから2対1でいいよ。という訳で模擬戦、スタート!」
いきなりだ。
「何かもう、唐突ですね」
俺はそう言って風遊美さんの方を見る。
と、風遊美さんは何か考え込んでいる感じだ。
「風遊美さん」
何か様子がおかしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます