第57話 小話3の4 裸族の狂宴

 そして俺にとって苦痛の時間がやってくる。


 広げられた青い見慣れた巨大円形プール。

 水道出しっぱなしで水はほぼ適量。

 ポンプの取水口と吐水口を両方プールの中に入れて温度調整中だ。


 待ちきれない鈴懸台先輩が時々小声で、

「風呂、ファイア!風呂、ファイア!」

 と魔法で湯温を上げている。


「そろそろ適温じゃないの?」

 由香里姉が手で湯を確認して、そしておもむろにTシャツを脱いだ。

 更にビキニの上を外し下にも手をかける。


「由香里姉、水着でいいじゃないですか。学校内なんだし」

「長津田君、風呂に水着で入るなんて日本文化の冒涜だよ」

 そう言う鈴懸台先輩は既に全裸。


「私の魔法で近づく人や機械がいればわかるす。心配はいらないす」

 そう言うジェニーも既に脱いでいる。


 ただでさえ幼馴染や同じ学校の先輩後輩の裸なんて禁断タブーの薫りがして危険なのだ。

 それが見慣れた工房内でなんてもう、ヤバさ爆発寸前。

 背徳感満載だ。


 俺は参加せず工房隅でロボコン用機体制作でもしようと後ろを向いた。

 すると。

 誰かに背後を取られ、Tシャツの裾に手をかけられた。


「離脱できるかどうかは、わかっているよね」

 背後から由香里姉にTシャツの上を剥かれる。


「下は自分で脱げるよね。お姉さんが脱がせてあげてもいいけれど」

「大丈夫です、大丈夫ですから!」

 断固拒否する。


「そう、そんなに遠慮しなくていいわよ」

 そう言って由香里姉は後ろに抱きついてくる。

 思い切り柔らかい感触が背中に当たる。


「お姉抜け駆けずるい!」

「私も参加するす」

 あ、人数が増える気配。


「行きますから、行けばいいんでしょ」

 やけになって俺はサポーターごと短パンを脱ぐ。

 脱いだ短パンを横の作業台に置いて、振り返る。


 由香里姉、香緒里ちゃん、ジェニーが全裸でこっち向きに立っていた。


 いつもの海辺と違い工房内には照明がある。

 つまり影になって見えない場所はない。

 由香里姉も香緒里ちゃんもおっぱいの先はもとより股間の薄い毛とその奥にうっすら見える何かまで見えてしまう。


 もっとヤバイのはジェニーだ。

 義足のシリコンライナーに巻き込むのを防ぐためか、下の毛が剃られている。

 つまり、割れ目もその奥も丸見え状態。


「修兄、興奮して成長している」

「あの小4の時に比べて大分成長したね」

「大人の男の子の部分を見るのは初めてす。大きいす」


 気を落ち着けるために、昔の偉人の言葉を思い出そう。


 偉大なる哲学者ニーチェ曰く。

『深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ』

 こっちから見えているという事は相手からも見えているという事。


 ここで下手な反応をしてはいけない。

 落ち着け、俺。

 たとえこれが負け戦確定であっても。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る