第56話 小話3の3 火炎魔法は調理器具

 暴風雨の中女子高生が水着で歌いながら踊る。

 そんな白昼夢のような時間の後。

 俺達はバーベキューを開始した。


 バーベキュー用の鉄板その他は工房にあった鉄板で適当に作った。

 俺の魔法で鉄板を切って曲げて脚をつけただけだけれども。

 後は香緒里ちゃんの魔法で鉄板の端付近以外に200度になる魔法をかけた。

 お手軽だがこれで充分だろう。


 由香里姉が油を油を引いて冷凍ラム肉ともやしをドン、と載せる。


「ミドリ、解凍魔法頼むわ」

「そんな魔法無いけどな」


 そう言いつつ鈴懸台先輩が冷凍肉に軽く火炎魔法をかける。

 これできれいに解凍されてしまうあたり熟練の技を感じる。


「ついでに先取り!」

 鈴懸台先輩がまだ生の状態の冷凍ラム肉を箸で取った。

 しかし自分の皿に置く時には既に焼いた状態になっている。


「あ、ミドリそれ反則!生取って魔法で焼いて食べるなんでずるい!」

「じゃあ平等に火を通してやろうか」


 鈴懸台先輩は箸で肉ともやしを平らに広げ、そしてわざとらしく呪文を唱える。

「ふふふふふ、炎を極めたる者の技とくと見よ!秘技、バーベキューファイア!」

 一瞬でもやしがしんなりとし、肉の色が変わった。


「おおっ!」

 と驚くと同時に全員の箸が自分の分確保に動く。

 あっという間にもやしだけになる鉄板。


 取り損ねた俺は仕方なくもやしを残ったラム肉のたれに絡めて集めて皿に取る。

 あ、でもこれも結構美味しいかも。

 すると月見野先輩が俺を突っついた。


「長津田君、接着剤を使っていない熱加えても大丈夫な板ってある。幅は30センチ位長さ1メートル以上欲しいんだけれど」


 ちょっと考える。

「杉の目地板でよければありますよ」

「お願いしていい」

「ええ」


 俺は目地板を4本ストックから持ってきて作業台の上に並べる。


「これでいいですか」

「ありがとう」


 月見野先輩は清浄魔法をかけて板を綺麗にすると、まだ膨れている買い物袋の中から冷凍ピザを数枚出してきて板の上に載せた。


「ミドリ、こっちも一焼きして欲しいのですけれど」

「おいよ、ピザ・ファイア!」


 どこかのヨガ超人のようなイントネーションで鈴懸台先輩が言葉をかける。

 するとピザの表面にみるみる焦げ目が出来て、チーズが溶けだす。


「こんなものかな。中まで火が通っている筈だよ」

「ありがとうございますですわ。炭水化物がちょっと食べたくなりましたの」

「私もゲットですわ!」


 小型ピザ5枚入り398円(賞味期限が今日までで半額シール付)が瞬殺。


「食べて汗かいたので冷やしてくるす」

 ジェニーがそう言ってTシャツを脱ぎ、水着になって倉庫の外へ出ていった。


「変質者に見つかるなよ」

「私のレーダー魔法監視中す。監視カメラも私の魔法からは逃れられないす。フルヌードで出ても問題ないす」


 何か危険なことを言いながら外へ出ていき、大雨の音をバックに歌を歌いだす。

 もう何だかわけがわからない。

 でも楽しい。

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