第28話 小話3の3 香緒里の魔法開発記
俺は香緒里ちゃんにそう言った後。
そんな製品を誰か作っていないか、もう一度検索してみた。
魔法利用の機器や道具類はデータベース化されネットで見ることが出来る。
このデータベースは隣の魔法技術大学で管理している。必要な場合は自由に検索したり発注したりパテント所有者に連絡したり出来る優れ物だ。
でもやはり今回の俺の需要に即した製品はみつからない。
魔力使用人造筋肉というのが一番近いのだが、これは動力と制御に魔力が必要。つまり今回のケースでは使えないようだ。
そもそも魔力永続付与型の製品自体、種類は少ない。
香緒里ちゃんのような魔法を使える人間が少ないからだ。
香緒里ちゃんは俺と同じようなスケッチブックを取り出して、何か図面を書いたり計算式を書いたりしている。
これはおそらく新しい魔法の開発中だ。
ある程度魔法が使えれば、自分の魔力を元に別の魔法を開発することが出来る。
例えば
魔法にはそれぞれ基本となる要素がある。
その組み合わせで様々な魔法が発現している訳だ。
だから自分の持っている要素をある程度把握していれば、その組み合わせで新しい魔法を開発することが出来る。
もちろん言うほど簡単な事じゃない。
要素は持っていても得手不得手とか相性とかもあることだし。
ちなみに俺が持っている魔法は物品加工と製品審査。
物品加工は無生物や植物等自分から動かない物を自由に切断したり削ったり曲げたり穴を開けたり組み合わせたりする魔法。
物品審査は主に製品や道具類の特性や組成、使用する場合の有効性や仕上げ等の状況を確認する事ができる魔法だ。
この2つを組み合わせて修理と整備の魔法も使うことが出来る。
小さい頃から目覚まし時計を分解したりプラモデルを作ったり電子工作をしたりしているうちに自然に身についてしまった魔法だ。
この魔法を駆使すれば工作機械無しでも原理と構造がわかっているものなら何でも作ることが出来る。
普段は魔法は使わず工作機械を使って物作りをしているが。
金属等を能力で加工するとそれなりに疲れるので。
この魔法をフルに使ったのはこの学校では2回。
最初の作品である超小型ヘリコプターを作った時。
それと今の学生会幹部3人の武器を本気で作った時だけだ。
不意に考え込んでいた香緒里ちゃんが頭を上げた。
「うーん、あと一歩の素材までは作れそうですが、使えるかは疑問です」
「何が出来た?何でも参考になるなら」
「何か金属素材ありますか。ある程度弾力性があるものがいいです」
俺はストック場所を引っ掻き回して、細くて薄い鋼材を見つけた。
これならある程度しなるし条件にあうだろう。
「これでいいか」
俺は鋼材をちょっとしならせてみせる。
「多分大丈夫です。ちょっと魔法をかけてみます」
香緒里ちゃんは鋼材を軽く撫でる。
「これで完成の筈です」
「それでこれはどんな魔法をかけたんだ?」
一見何も変わらないように見える。
「流れる電流で弾性係数が変わる金属です。電流で制御できて力に関係する性質変化を色々試したのですが、結局これくらいしか出来ませんでした。本当は体積が変化すればいいなと思ったのですが」
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