第4話 空で得られる重い物
ここはカフェテリア。
ちょうどいいコップが目の前にある。
水が入っているけれど。
俺は目の前の水が入ったコップを飲み干す。
「例えば。このコップの中に入ったものはマイナス200度になる。そんな魔法をかけられる?」
香緒里ちゃんはコップに手を当てて、軽く目を瞑る。
「やってます。うーん、これで出来たと思うのですけれど」
俺はそのコップを見る。
見る間に中に液体が溜まっていくのが見えた。
「ストップ、コップをもとに戻して。実験成功」
コップの中の液体はあっという間に沸騰して消えていった。
「今のは何なんでしょうか。水が溜まったみたいですけれど」
「水じゃない。水はそこで凍りついているだけ」
コップの周辺が凍りついている。
「今の液体は液体窒素と液体酸素。液体酸素は危険だから注意が必要だけれど。これを使えば空中でも重さを変えられるだろ」
俺はバックの中から小さいスケッチブックを出す。
作りたいもののアイディアが突如浮かんだ時用に持ち歩いている代物だ。
「まず自分の体重より少しだけ軽い背負える物を作る。これにあの箸袋に使った魔法をかけてジャンプすればだいぶ高く飛べるよね。それが第一段階」
「うん、それはわかります」
次に背負う部分の上にタンクを書き足し、タンクへ入るパイプとタンクから出るパイプを書き足す。
「次にここにタンクをつけて、それぞれ入るパイプと出るパイプをつなぐ。入るパイプとタンクには今コップに使ったマイナス200度の魔法をかける。こうすれば液体になった空気を中に溜められるよね。中に空気を入れれば重くなるし出せば軽くなる。そうすれば空中でも重さを変えられるから上下できる」
「うーん、確かにそうです。これなら上下できます。完成ですね」
「まだ早い」
俺はパイプを更に加える。
「このタンクから出るパイプをこうやって前や後ろや上や下へ出す。こっちのパイプは先端の温度が30度位になるようにする。そうしてこのパイプから出る液体窒素を気体にして調節して吹き出す。そうすればある程度は空中で自由に飛べるんじゃないかな」
香緒里ちゃんは図の上を指でなぞったりしてちょっと考え、頷いた。
「確かにこれなら自由に空を飛べます。課題、完成ですね」
本当はそうだ。
課題は概念設計まででいい。
だから今の図を綺麗に清書して説明を加えれば完成だ。
しかし。
俺のもの作り欲が火を吹きはじめている。
ほとんど病的な作りたい欲が臨界点まで来ている。
そしてここからが俺の魔法の本領だ。
実物の製作。
「課題の提出期限、去年と同じなら2週間だよね」
香緒里ちゃんは頷く。
「そうですけれど、それってまさか」
「どうせなら空飛ぼうぜ、これ作って」
余分な仕事になる。
それはわかっているけれど抑えられない。
だから俺は、そう言ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます