第3話 作るぞ課題の概念設計

「さて、香緒里ちゃんの魔法を使って空を飛ぶとする。ちょうどこの前の箸袋を飛ばした魔法が使えるかな」

「でもあれを私にかけたら、空から戻れなくなっちゃいます」


 つまり香緒里ちゃんの魔法は空中へ人間を飛ばせる威力はあるということだ。

 ならいい。

 次の段階だ。


「香緒里ちゃんと同じ重さの物体にあの魔法をかけて、抱きついて地面を蹴れば浮くかな」

「多分浮くと思います。手を離したら下に落ちますけれど」


 お、だいぶ構想が見えてきた。


「例えば背負える巨大な水タンクを用意する。水を目一杯入れて背負って魔法をかければ空へと上昇する。水を上空で出して軽くすればその分浮力が減るから調節次第でゆっくり降りられる。それに間違いはないかな」

「あ、それなら飛べますし降りられますね」


 香緒里ちゃんがうんうんと頷く。


「でもそれだけじゃ洗練されていない。水抜きすぎれば事故になるし」

「そうですね。落ち始めたら助からないです」


 出来れば空中で浮力を上下どっちにも変えられるのがベストだ。

 でも空中にあるのは、空気だけ。

 その中で少しでも重い物というと……


「香緒里ちゃん、空気中の水蒸気を集めて凝集させるフィルターとかって作れる」


 香緒里ちゃんは少し考える。


「どこでも水が飲める水筒を作ろう、そう思って試した事があります。大分前ですけれど。でも飲めるほどの水を作るのには凄い時間がかかったんです。ただ冷やすだけとか温めるだけなら簡単ですけれど」


 そうか、空気中の水分を集めて重さを変えるのは効率が悪いか。

 ん、待てよ、冷やすのは簡単なんだよな。


「冷やす温度や温める温度の制限ってある?」

「冷やす方も温める方も水でしか試したことがないです。氷にもなるし蒸発もするのですがそれ以上は試したことはないです」


 よしよし、それならば試してみる価値がある。

 今俺が思いついたあることを。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る