第1章 空を自由に翔びたいな

第1話 課題はいきなりやってくる

 水曜日の午後3時。

 俺は第1工作室で50ミリの丸棒を削っていた。


 この第1工作室は午後は創造製作研究会の部室と化している。

 俺以外にも6人程室内にいて、マシニングセンターやらフライス盤を使ったり、電子工作をしたりと色々やっている。


 学年は最上級生の5年生から2年生の俺まで揃っているが、皆無口な男子生徒ばかりだ。

 なおかつリアルにもの作りが好きな奴ばかり。

 この学校では異色な部活だ。

 何せここは魔法実技が幅をきかせている上に生徒は女子7割だし。

 でも俺にはなかなか居心地がいい。


 今作っているのは魔法の杖。

 攻撃魔法科所属の学生から頼まれたものだ。

 今削った丸棒は杖の本体部分。

 これに魔力の媒介になる魔石を埋め込んだ頭部分をつければ完成。


 魔法を使うには馴染んだ杖があるとかなり便利らしい。

 だからこうして魔法杖を発注する奴は結構いる。

 俺としては自分で作った方がより思い通りに出来るだろうにと思う。

 設計図も公開しているし。


 でも作れば材料費の他にそれなりの報奨金が本人と学校側から出るのだ。

 結果として俺にも悪い話じゃない。

 まあウィンウィンの関係という奴だ。


 杖の本体部分がほぼ思った通りに出来た。

 あとは焼成中の銀粘土製頭部分が出来るまでちょっと一休み。

 そう思った瞬間だった。


 第1工作室の前のドアがノックされた。


「はい」

 一番下っ端で手も空いている俺が返事してドアを開ける。


「あのー長津田先輩は? あ、ちょうど良かったです」

 香緒里ちゃんだった。


「ちょっと相談があるのですけれど、今大丈夫でしょうか」


 背後の機械音が止まった。

 そしてこっちに突き刺さる視線。

 ここで話し込むのはまずそうだ。


「部長すみません、ちょっと出てきます」

「納期は守れよ」

「了解です」


 俺は返事をして部屋を出る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る