パーティにて
紅葉知花
豪華なパーティ
年老いた富豪は日付の変わるころ、いったん自室へと戻り若い花嫁がホストとして客を持て成した。
広い会場には美しい寄木細工のテーブルが並べられ、その上には豪勢な料理はずらりと載っている。これらは深夜まで尽きることなかった。
専属のシェフが腕を振るったキャビアにフォアグラ、ローストビーフ……。
締めは花嫁が強く希望した子豚の丸焼き。
夜が明け、パーティが終わりに近づく頃。花嫁が自室にいる富豪を呼びに行ったところ、富豪は自室で頭から血を流し亡くなっていることが判明した。
発見時の時点で死後数時間が経過していた。
富豪の死因は、鈍器のようなもので頭を殴られたこと。
何かで殴打したなら証拠が残りそうだが、警察の調査がいくら進んでも凶器は発見されなかった。
富豪の自室に簡単に出入りできる花嫁が容疑者とされたが、特定するには凶器を判明しなければならない。
一体犯行に使われた凶器は何だったのだろうか?
尚、警察以外に玄関を開けたものはおらず、邸宅の各所に設置された防犯カメラの映像から、パーティの最中に外へ出たものもいなかった。
また、来客者全員の持ち物を入念に検査しても怪しいものは一つもなかった。
はたして凶器は何なのだろうか?
また、その凶器を何処へやったのだろうか。
全くもって謎が解けないので、警察は因縁のライバル、探偵に調査を依頼した。しかし派遣されたのは如何にも詐欺師です!と主張するような身なり、喋り方の女だった。
但し上からの評判は良く、彼女が解けなかった謎は無し、と豪語されていたが警察たちにとって不安要素しかなかった。その探偵はちょちょっと現場を見て、話しを聞いただけで「もういいです」と言い放った。
「うんうん。凶器も、凶器がどこに行ったかも分かりましたよぉ!」
胡散臭い笑みを貼り付けながら喋る女は、虫眼鏡を片手にゆらゆらと動き出す。
「ズバリ、凶器はですねぇ……」
キランと瞳を光らせ、女は口を開いた。
「子豚、ですね」
どや顔で言い放った彼女を、周りは訝し気に見つめる。
中には酷い言葉をぶつけるものもいたが、彼女は気にせずロングヘアをさらりと流した。
「料理で出されたんですよねぇ?子豚の丸焼き。子豚の保存方法って大体は冷凍保存なんですよぉ。で、子豚って冷凍保存すると簡単に人を殴り殺せるほど重たく、硬くなるんです。つまりですねぇ」
「花嫁さんは冷凍保存された子豚を使って富豪の頭を殴り倒し、しかも凶器はシェフの腕でこんがりと焼かれ、来客者全員のお腹の中に隠されたってことですよぉ」
ね、と花嫁の方に顔を向ける探偵を睨み付ける花嫁。一斉に飛びつかれ、花嫁は無事に捕まった。
「事件解決ですねぇ」
気味が悪い笑顔で探偵は去っていった。
皆さんも子豚の丸焼きにはご注意ください。
パーティにて 紅葉知花 @rahumeikaa
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