私の話。

@Marili_Monroe

第1話 幼き頃の帰り道

いつ頃だったか少し曖昧ですが、確か私がまだ園児だった頃の話。


ある日、親がどうしても時間通りに迎えに行けないとのことで夕方まで幼稚園で迎えを待っていた。

引っ越しをしてきてからすぐだったこともあり、まだ園の空気になじめなかった私は一人、教室の隅のほうで絵を描いていた。


そうしていると、一人の男の子が私に近づいてきてこう声をかけてきた。


「ねぇ!○○(私の名前)の家に遊びに行きたいな!」


そう声をかけてきたのは今なお仲の良い友人のHであった。

その当時から私に何度も声をかけてくれ、よく人の輪に入るのが苦手な私を引っ張ってくれる頼もしい人だった。

しかし、母が来るまで待ってるようにと言われていたので私は「お母さんが来るまで待って」と告げた。


そんな私にHは「うちのお母さんと一緒に帰れば大丈夫」と言ってくるのだ。

彼の横には私の母とよく話しているHの母親が立っていた。

小さい頃の記憶なので初めからいたのか、途中からいたのかが曖昧になっているが確かにそこにいた。


Hの母が「○○君のお母さんに頼まれたんよ。一緒に帰ろ。」と私に言った。

そんなにも小さい子供が知っている人にこう言われればもう迷うはずもない。

私は二人と一緒に自宅へと歩いていくことにした。



もしかしたら幼いころの記憶だったこともあり誇張などされているのかもしれないが今でも脳裏浮かぶあの日の空は真っ赤なアクリル絵の具をぶちまけたような赤色と

カシミールサファイアのような澄んだ青紫色が入り混じった色合いになっていた。



そこからどうしてその道を通ることになったかは覚えてないのだが

車がよく通る、しかし歩道などない、

かろうじて白線の外側を歩くことができるような道を私たちは歩いていった。

そんな危険なところを通っているにもかかわらずHの母は咎めることもせず、黙ってHと話す私を見ていた。

家まであと10分ほどじゃないかといったところでHは私に突然こう話しかけてきた。


「ねぇ、あとどれくらい?」


急な坂道がずっと続いて歩き疲れたのだろうか。彼は私に聞いてきた。


その頃の私は、母の運転する車でしかその道を通ったことはなかったので

正確な距離などわかるはずもなかった。

しかし車での際は家までそれほどかからなかった気がしたので、

私は「もうちょっとだよ」と答えた。


そこからだんだん雰囲気がおかしくなってきた。


数十歩進むたびにHが「ねぇ、あとどれくらい?」と聞いてくるのだ。

私はそのたびに「もうちょっとだよ」と答えた。

その当時は"そんなにも聞いてくる彼が怖い"とかではなく

本当に"もうちょっとで着きそうだ"と思ったのでそう答え続けていた。


あと家まで700mほどかと言ったところで今度はHの母が呆れたような顔で

私に「ねぇ、あとどれくらい?」と聞いてきた。

それに対し「もうちょっとだよ」と答えるとHの母はHに耳うちをした後


「もう時間も遅いし今日はもう帰るわ。」


と道の左から出ている小道をHの手を引き二人で帰っていってしまった。

そんな二人から目線を話したとき、さっきまで

不思議な色をしていた風景がいつもの淡い橙色した夕焼け色にかわっていた。


この後自分の足で帰ったような気もするし

慌てて探しに来た母に連れて帰られたような気もする。

だがいま母にこの話をしても、"そんな覚えはないし、

第一あの頃いつも家にいたから迎えに行けないなんてありえない。"と言っていた。

また二人が帰っていった小道なんてものを見たのはあの時のみで

そこには普段、段々畑が広がっている。

さらにあの二人は少し大きな山がある方向へと向かったのだが、

Hの家は今も昔も変わらずそこから逆方向に10km以上は離れた

海沿いのマンションにある。


多分、見た夢を現実だと思っていた可能性が一番高い。

しかしその時の景色や唐突に聞かれた


「ねぇ、あとどれくらい?」


の声は未だに嫌というほど鮮明に頭から離れない。

そしてこの事があって以来今でもたまに不自然なことが起こる。

そういうことがあるたびこの事を思い出すので文面におこして

少し気が楽になりたかっただけの文章でした。


お目汚しな拙い文章で大変失礼いたしました。

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