第525話 ◆歓迎会  その3

◆歓迎会  その3


キャー  ちょっとシルフ。  早く早くーーーー!


待ってろ。 今もっていく。


あっちっち  パスタのお鍋が吹きこぼれたーーー!


セレネ、これ。


うぉっ  これちゃうやん。   そっちの人魚のミルクを入れるのよ。


いま作ってるのは、セレネ特製カルボナーラ風パスタなの!


わかった。 これだな。


そうそう。 あとバターと「もにゅぱ~の卵黄」と「回転アルマジロのベーコン」で・・・っと


あっ シルフ、そこのブラックペッパーも取ってくれる。


まかせろ。 それっ!


ぎゃー 胡椒の蓋が取れたぁーーー



あ゛ーーー  セレネさんたち。  ほんとうにうるさいですね。


まったく・・料理に集中できないじゃないですか!   コリン君があきれ顔でセレネを見る。


だってコリン君があたしたちが持っていく分を作ってくれないからじゃないの!


いや だからそれは自分のノルマでしょ!


だってアリシアたちの分は作ってあげてたじゃないの。


うっ それは・・・  痛いところを指摘され、コリン君は言葉に詰まる。


と、ところで今更なんですが、ほんとうにそのパスタを持って行くつもりなんですか?


そうだけど何か?


パスタは時間が経つと冷めて美味しくないですよ。  コリン君がいかにも不味いものを見る目でセレネが持っているパスタを見つめる。


だーかーらーー  向こうで温めなおせばいいじゃないの!


いや、そうすると麺が柔らかくなっちゃいますよね。


あっ・・・  今更気づくセレネだが、いい加減な性格なので動じない。


ふふん  新作パスタとしてごり押しすれば、きっとそういうものだと思うって。


だいたいこっちの世界じゃ、みんなカルボナーラなんて知らないんだしぃ!


まあ、僕は食べませんけどね。


きぃーー  コリン君のバーーカ!  バーカ!


わ、 たいへん。 もうこんな時間。 シルフ、そろそろ行くわよ。  


わかった。


セレネとシルフは大鍋いっぱいの特製カルボナーラ風パスタを持って、あたふたとキッチンを出て行った。


やれやれ。 これでやっと落ち着いて料理ができるよ。


それにしても大皿で20品もオーダーするなんて、ヴォルルさんもひどいよな。


いくら僕がセレネ城で料理を作っているからって、普段は多くても5品をメンバー分作るくらいだし。


コリン君は、ぼやきながらもテキパキと料理を作って行く。


あと1時間か~ 早くしないとアリシアが料理を取りに来ちゃうぞ。


そう、料理ができあがったころにアリシアが瞬間移動で料理を運びに戻ってくるのだ。


アリシアは16歳になり魔力もアップして高難易度の魔法も使えるようになり、いまではコリンのそれを大きく上回っている。


同じハーフエルフでも、ララノアの血を引くものとの差は歴然なのだ。


アリシアが料理を取りに来て折り返してヴォルルの棲む古城に着いたころに、ちょうどセレネたちも着くだろう。


空を飛んで古城に向かったセレネとシルフのスピードは、それくらいなのである。


もちろんセレネたちの飛ぶ速度は速いのだが古城までは結構遠いし、大鍋はたいそうな重さがあるのでしようがないだろう。


そしてコリンが作った料理の中の一品に、本格カルボナーラもあったのである。


これが後のセレネの家出につながって行くのであった。


次回 ◆歓迎会  その4へ続く

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