第13話 僕と彼女は

 始業式まであの笑顔を見ることは無かった。どうしてかと言われれば、うまく答えることができない。でも、会いたいという感情よりも別の感情が生まれていたことは確かだった。

 8時過ぎ、僕はいつものように教室に入る。ちらりと奥を見る。彼女はいた。ホッとしている僕がいた。どう話そうか迷いながら席に座ると、彼女から話しかけてきた。

「お、おはよう、、、」

「うん、おはよう。」

 いつもより声は小さいが挨拶をしてくれたので安心した。

 しかし、いつものようにはいかなかった。沈黙が生まれる。話せない。

あのことを聞きたいのにためらってしまう。ちらり顔を伺うと目が一瞬あうが、すぐにそらしてしまう。

その時間は人生で一番長く感じれた。

そうして、お昼のチャイムが鳴ってしまった。

 いつもと同じように席をくっつけ弁当を広げる。このまま無言だったらどうしようと思ったが、彼は確かにその沈黙を破ってくる。

「よっ、お久だね。まさ、美穂。補習の時以来じゃん。ってかどうだった?二人のラブラブお祭りデートは。」

「なんでゆうは来なかったんだよ。裏切ったな。」

いきなり聞いて来たので驚いたので慌てたが、当たり障りのない質問を返した。

「いや、ナンパだよ(笑)。お前どーせついてこねぇだろ。」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」

 

こうして、昼休憩は僕とゆうとの会話だけで終わった。隣の彼女はただ笑っているだけで会話には入ってこなかった。


 9月になって、体育祭が過ぎ、制服が冬服に変わったが、僕たちの距離はまだ変わらなかった。ゆうも心配して聞いてきてくれたが、はっきり言うことができない。このままでは、何も変わらない。このままでは、話せないまま僕は命を終えてしまう。こんな感情は初めてだ。

 こんな日に限って雨が降っている。そのせいなのだろうか、いつもの通学路の花や木の様子もいままでとは違う表情をしているように見えた。

 家に帰った後、僕は父のビールを勝手に開け、スマホを開いた。そのまま初めて彼女に電話をした。話せば何とかなる、そう思った。つながるまでの時間が非常に苦痛である。早くつながってくれ。

 

 僕は話せばわかると思っていたが、僕の願いとは裏腹に僕と彼女はこの夜話すことは無かった。理由はひとつ。彼女は電話に出なかったからだった。


 翌日僕は、いつもより早く学校に行った。彼女に会うために。だけど、彼女はいつまでも現れなかった。

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