第5話  運命は嫌い

それから、僕は彼らと過ごすようになった。明るくてまぶしい彼らは、いつのまにか僕での認識が変わっていった。

 今日は、生まれて初めて授業中に居眠りをした。もちろん、彼らは爆睡している。中学の頃は、時間がもったいなくてこんなことはできなかった。先生は、顔を真っ赤にして僕らを怒ったがあまり悪い気はしなかった。


 「キーン、コーン、カーン、コーン」

チャイムが鳴る。時間は12時20分。昼休憩の時間だ。

教室の隅で、僕らは机をくっつけてお弁当を広げた

「なあ、まさ、工藤と蘭が付き合ったらしいぜ。」

「えぇ、マジで?このクラスで3人目じゃん!」

僕の代わりに、プリンセスが反応する。恋愛の話は秒速反射なのだろう。

「まあ、毛利ちゃん、かわいいし。おとしやかって感じだもん。」

突っ込むと面倒なので代わりに心の中で突っ込むことにする。

「まあ、美穂が彼氏を作るのは、俺がテストで100点取るくらいムズイよな。」

あかん、一生できんやん、それ。

「ゆうはさ、どういう人がタイプなの?」

「まず、きれいで、おとしやかで、スタイルがよくて、、、、、、ぷっ、おっぱいがある人ぉかな。」

男二人は、目の前の彼女をみる。あぁ、まだ16歳これからだ。不意に笑みがこぼれる。

「おっぱい、おっぱいってそんなにいいのか。」

「うん。」

声がそろってしまった。今日だけはゆうと同意見だ。

「くぅぅぅ、もしかしたらあるかもしれないよ。」

「、、、、、、」

ひざげりを食らった。今週何回目だろう。


 中林雄一朗は、見かけによらずそのまんまだ。健全な16歳。童貞ダンゴムシは、野球部にだった中二のころに、七夕の短冊に童貞が治りますように、と書いたからであった。活発で、人当たりがよくて、とても馬鹿だが時々鋭いことを言う。


「私は真面目で、浮気をしない心が大きな人がいい。ゆうとは違ってね。」


 浜波美穂は、ショートカットでニコニコしている女の子だ。顔立ちは整っていて男子からの人気はあってもいいはずだが、中身が少し残念だ。


「じゃあ、お前は運命さんの力を借りるしかないね。」

おふざけをもったその言葉を彼女は真剣に返した。

「運命は嫌いかな。自分の人生は自分で決めたいもん。いつか、いい人を見つけてやるっ。」


 でも、彼女は時々妙に深いことを言う。不思議だが、そのせいだろうか僕は彼女の笑顔が少しまぶしすぎて、そしてその分だけ影が濃いよう気がした。

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