精霊と、精霊使いの物語。そして、人と人の物語

『精霊』の存在を感じる力があるけれど、ひとには信じてもらえない。そんな境遇の中にある、主人公の少女マリポーザの村に、精霊を操るという精霊使いがやってくる。マリポーザは素養を見いだされ、精霊使いに弟子入りすることになります。優しい文体でつづられる物語は、そこからゆっくりと始まります。

いかにも王道ファンタジー。しかし、それだけではないのです。
この先マリポーザは修行とかするのかなあ、というノリで読み進めていましたら、なんだか雲行きが怪しくなってゆきます。
あらすじにある通り、マリポーザはだんだんと大人たちの思惑に巻きこまれてゆきます。物語が動きはじめてからは息もつかせぬ展開になってゆきます。

精霊とはなんなのか。精霊術とはなんなのか。そういったことも、しだいに明らかになってきます。

精霊使いを志し、陰謀に立ち向かい、精霊の真実を知った少女が、どのような道を選ぶのか。
途中、つらい展開もありますが、ぜひ最後まで見届けてください。一本の映画を見終えたような充実感を味わえます。

欲を言うなら、マリポーザとアルトゥーロさんの修行風景がもう少し見たかったですかね……!