冬の帝国と精霊対話師

アウグスト葉月

プロローグ

 彼女はまだ世界との対話を始めていなかった。

 空を見上げ、絶望の中で世界が変わる音を聞いていた。

 炎がはぜ、焼き尽くす音を。

 目の前で世界が焼け落ちていく。

 炎が舞う。怒り狂い、全てを焼き尽くさんと踊る炎が。

 大気が震える。

 マリポーザは口の中が乾くのを感じた。

 熱気で皮膚がちりちりするほど暑い。

 なのに、身体中の血という血が冷えてしまったかのように身体が冷たい。

 赤。紅い。

 世界が、変わる。

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