第6話三嶋夢馬と私の三嶋論。

三嶋夢馬。

丸い目。

長いまつげ。真っ白な歯。

ピンク色の唇は薄すぎず厚すぎず、富士山型。

かわいいか、 そうでないかと聞かれたら、

きっと、かわいいんだと思う。


三嶋には、頑固な所がある。

彼女は大人の言う事を聞くのを嫌った。それは普通の高校生の反抗心とは違い、自分の信念を貫くからこその事だった。

生物の教師にユニコーンがいると豪語した時、

彼女は本当にユニコーンがいると信じているだけだった。

その教師が嫌いなわけでも、大人が嫌いなわけでも、イライラしていたわけでもなく、

ただユニコーンはいると思っていた。


ーどうして岩木に、あんな事言ったの?

ある日の帰り道、ふいに会話が途切れた時、私の口から出た言葉はずっと聞こうと思って聞けなかったことだった。

「あんな事?」

私にとっては噂話でも、彼女にとっては過去の事だ。私の聞き方はまるでついさっき起きたことについて聞いているかのような口調だった。

ーレポートの、

「ユニコーンのこと?」

三嶋が私の言葉を遮るのは初めてだった。

彼女は早口で色んな話を次から次へとするが、人の話を聞くことも得意だった。今まで私がダラダラと説明をしてしまっても相槌を打って最後まで聞いていた。彼女はただのおしゃべりな女の子ではない、と私は思っていた。

「あのね、ゆまは自分の目で見たものを信じるの。自分が信じたいものを信じる。ユニコーンがいないってあすかは証明できる?」

ーわからない。でも、いないのかなって思ってる。

自然と声が小さくなった。三嶋の事は大好きだし、三嶋の考え方も大好きだ。けれど、やはりユニコーンは実在しないのではないか、と私は思っていた。彼女の世界は美しい。妖精、ユニコーン、魔女、遠い国のお姫様。子供の頃どこかに置き忘れてきてしまった小さな自分の世界を、彼女は捨てずにずっともっている。彼女の体が成長するにつれ、彼女の心も成長し、彼女の世界は育まれた。

「ゆまは、絶対にユニコーンはいると思う。おかしいって分かってるよ、いないことを証明しろってゆいながら、絶対にいると思うなんて」

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ユニコーンがいない証明 @chihiroY

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