箱の中の世界

@Kyokun

第1話

今までで一番楽しかったことや悲しかったことはあまり記憶にない。記憶を辿れば、楽しかったことはあったのかもしれないが、そういう感情も忘れてしまった。

笑った顔はいつもつくり笑いで、それを客観的に見るもう一人の自分がいる。その無理な笑顔はどこか違和感を感じさせるからだろう「ロボット人間」や「ロボ」と言われている。

思い起こすと周りとの差異に気づき始めたのは小学校に入学してすぐだった。

それからは昼休みも放課後も本の世界に入り込んだ。そこに特別な感情などはなく、何もないただの一日を費やすと同時に登場人物から色々と学んでいた。もし相手が困っていたら、助けるなど何の変哲も無いことですら本の助けなしではわからなかったのだから。

その生活を長い間続けていくうちに月日は流れて、高校の入学式の日に感情が豊かであろう女性が満面の笑みで声をかけて来たのだ。

「ミステリー研究会に興味はありますか?」

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