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2歳児のねんね事情

 アゴである。とにかくアゴなのである。


 子どもの多くが、独自の「ねんねアイテム」を就寝のために必要とする。


 例えば親指をくわえてチュッチュッしたり、お母さんの耳たぶを触ったり。


 ちなみに私自身の幼い頃は、お気に入りのピンクのタオルがないと眠れなかった。随分長く愛用したので、かなりボロボロであちこちほつれていたように記憶している。


 さて、ではうちのアムゴロー氏の「ねんねアイテム」は何かというと、それは母氏のアゴである。


 母氏のアゴを撫でながら、下唇をちゅーちゅー吸いつつ就寝するのがアムゴロースタイル。


 母氏のアゴでなければならない。


 たまに夜中寝ぼけて、パパ氏のアゴを触ってしまうのだが、そんな時はすぐに異変に気付いてローリングバックで母氏の元へ戻ってくる。


 あまりにアゴを愛好しているので、ちょっとその理由を尋ねてみた。


「アムちゃん、そんなに母氏のアゴっていいの?」


「うん」


「どこがいいの?」


「ほくろー」


 なるほど。確かに母氏のアゴにはやや膨らんだホクロがあって、そのあたりをカリカリサワサワすることが多い。


「パパはおひげあるからさわらない」


「そうなの?」


「おひげイジワルするからー」


 確かにチクチクするもんね。




 そして母氏のアゴの活躍は就寝時に限らない。


 保育園のお迎え時も、寝起きも、外出時に知らない人に会った時も、彼の心の安定を保つために、「アゴさわさわ」が不可欠なのである。


 母氏のアゴ。それはアムゴローの精神安定剤トランキライザー


 アゴさえあれば世界は平和だ。


 ありがとうアゴ、素晴らしいよアゴ、ノーベル平和賞だよアゴ。


 なお、ここで一つ皆さんにお伝えしておきたい。

 母氏のアゴは決してしゃくれていないということを……!

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