鉢の噺~国王~
~私はクラリーナ国王~
~私はクラリーナ国王~
~私はクラリーナ国王~
~私はクラリーナ国王、病気により長い間床に入り、今まさにその命がツキヨウとしている~
~ああ、私の長き友よ、いるだろうか~
~私は最後に私のすべてをハナス事にしよう。私は昔、こことは別の世界から来た。
だが私にとってここは暮らしやすく、君を初めとした友も沢山デキテ、目標もあったから元の世界に戻る事はさほど苦にはならなかった~
~君と共に長い旅をして、沢山の村を救い沢山の敵を倒し、魔王を倒し国を救い、姫と結婚し新しく王とナッテ、
この国を導く為に砕身する事を誓った。
やがて子どもが産まれ育ち自立し新たな世界を作り、私が守った国の新たな壁になり剣になり目になり耳になり、最後には私の後を継ぎ王となるだろう。
そのアイダ私は、毎晩毎晩恐ろしくてシカタナカッタ~
~私はいつあの世界に戻されるか分からなかったからだ~
~マイバンマイバン私はあの世界に戻されるのかと思うと怖かった。
村を襲う怪物を倒すより、愛する者に裏切られる怖さよりも・・ああ、あの強大で邪悪な魔王を倒す直前もズット、あの世界に戻される方が怖かったのだ~
~子ども達が産まれ育ち自立し、皆々からは幸せな家族だと言われようと、妻や子ども達が幾ら私を慕い誉め称えようと、
その心の内側はこの世界に始めて来た時トオナジ、あの世界に戻される恐怖に震える小さな小さな自分がいたのだ~
~だがその恐怖も今日終わる。
何故ならワタシは今夜死ぬからだ。
死んでこの世界の土になるからだ。
元の世界に戻らないまま、あの虐めや冷たいだけの世界に戻らないまま私は死ねるからだ~
~私は、それが嬉しい。
嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい。
友よ、私は一足先に死ぬ。
だが私は喜んで死んだと、ユエツの中で死んだと皆に伝えてくれ~
~さらばだ、友よ。今度は土の中で会おう~
ーーーこうして、クラリーナは亡くなった。
山奥にある精神病院の一室の中で、笑顔のままで死んでいった。
彼がどうしてそんな愉悦の表情で死んだのか、誰も知らないままーーー
fin
いろはに C・トベルト @Ctobeluto
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