餐の噺~茶会~

いろはに~餐~


~S、貴方は知ってるかしら。

 実は私は、奴隷だったのよ~


~N、どうしたんだいいきなり~


~私はね、昔はとても権力がある家に生まれて、平和と慈愛の空気を吸いながら生きていたの。

 でも借金で全てを失い、私は奴隷として生きなければいけなくなったの~


~それは悲しい話だね~


~そして私はある金持ちに買われて、酷く酷く働かされて、それがあまりに辛くて、薬で目を閉じてしまったのよ~


~酷い話だね~


~ええ、酷い話だわ。

 それだけ?~


~それだけ。だってそれ、かなり前にボクが話した物語の前半部分にそっくりじゃないか~


~あら、バレた。

 本当にかなり前に話した話だから、Nを驚かせられると思ったのに~


~やれやれ。ついでに聞くが、その話のオチはどうするつもりだったんだ~


~私は病気にかかり、いつもSの話を聞きながらケーキを食べないと死んでしまう病気にかかってしまうのよ。

 その話に同情したSは、今準備している紅茶とケーキを私に食べさせながら楽しい話をしてくれるって所までが作戦だったの~


~あれ、バレた?

 一人で食べるつもりだったんだけど~


~その割りには二種類の香りがするのは何故かしら?

 さあ私の思い通りに紅茶とケーキを差し出しなさい~


~やれやれ。でも本当にあんな昔の話を良く覚えていたね~


~私、目は見えないけど記憶力は良いのよ。

 Sの話は全部覚えているわ~


~ううん、これはボクの負けかな。

 今ケーキを食べさせてあげるね~


~わあ、ありがとうS!とっても優しいわ~


~白々しい。

 でも、君は確かに奴隷には向かないね。

 もっと広い世界の方が楽しく笑っていられそうだ~


~ありがとう、S。

 さあ、お茶会を始めましょう~



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