残の噺~結末~


~ああ、まさかこういう結末とはね。

 衝撃的だな~


~どうしたの、S。そんな大袈裟に驚いて。どんな話を読んでしまったの~


~ありがとうね、N。でも君に聞かせるには少し酷な話かもしれないよ~


~私、Sが話してくれる話は好きだよ。

 それがどんな話でも、聞きたい~


~ありがとう、それじゃ一気に話させてもらうよ。

 この話は勢いを大切にしているからね~


~うん、聞かせて~


~悲しい親子の話だよ。仕事を探す為に親は寺に一時子を預けたんだけどね。

 その寺の主は人使いの荒い人で、まだ新人の子に危険な夜道を歩かせる仕事をさせた上に、その時に草で足を少し切った為に血が流れて寺が汚れたからという理由で殺してしまったんだ。

 首をはねて、古い祠に首を隠し、体は犬に食べさせてね~


~まあ、酷い話ね~


~でもこの話には続きがある。

 次の日別の小坊主が同じ夜道を歩くと、仕事先の古い堂から声が聞こえてくる。

 子どものすすり泣く声だ。

 小坊主が恐る恐る覗くと、そこには燃え盛る炎に包まれた生首が祠の中を飛んでいた。そしてその顔は、前日居なくなった子どもの顔だったんだ~


~化けて出て来たのね。

 そんな悲しい死に方をすればそれは世を恨んでも仕方ないと思うわ。

 S、その続きはどうなったの~


~実はね、N。

 ボクはその先を読んでいないんだよ。

 子どもが燃える生首になって出てきた所に悲しさと憤りを覚えてしまったから。

 でも読まなくてもこの先どうなるか分かるよ~


~私も分かる気がするわ。

 父に会いたいけど何処にいるか分からない。寺の主を間違いなく憎み殺すでしょうけど、その後どうすればいいのか分からない。

 その子はずっと炎に包まれながら泣き続けるしか無いでしょうね。

 話を聞かせてくれてありがとう、N。

 私もこれ以上この話を聞きたくないわ~


~この子の安寧を求めたからこそ、父は寺に家を預けてまで仕事を探しに行ったのにね。

 だけどね、良い事も有ったよ~


~何?~


~君も悲しんでくれた事さ。

 他の人に同じ事を話せば必ずこういう答えが来るだろう。

 『どうして話を最後まで読まないんだ、もしかしたらどんでん返しがあるかもしれないのに』。

 話を楽しむ人なら必ずそういうだろう。

 ボクも話を読むのが好きだから、同じように途中で読み飽きた人を見ればそういうだろう。

 でもボクはこの続きを読むのは嫌なんだ

。例えこの先、子どもと父親が再会出来たとしても、ね~


~そうね。私はとても悲しいわ。

 私は目が見えないけど、Sの話を聞けるのは凄く嬉しいわ~


~この残った物語をボクは読みたくない。

 だからこの本は暫く棚の奥に隠しておこう。

 もしかしたら、誰かがこの続きを読むかもしれないしね~


~その時まで御休みなさい、小話さん~


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