ライフ・イズ・ゲーム

ちびまるフォイ

飽きないゲームがほしいんです!

「夏休みだからってだらけてちゃダメだぞ。

 休みの間もみんなちゃんとゲームするように!!」


「「「 はーい 」」」


ゲームはもはや国全体をあげての一大事業。

昔のような「こどものおもちゃ」ではなくなった。


「はぁ……」


「どうした。夏休みに入るというのにため息なんて」


「先生。……別になんでもないです」


「そうか、ならいいがな」


実はゲームに飽きたんです、とは口が裂けても言えない。

数学の連立方程式が人生のどこに役立つんだと逆ギレするようなもの。


家にあるゲーム機本体をしまった押入れは開かずの扉となり、

どんなゲーム機がしまってあるかももう忘れた。


「はぁ……飽きたんだよなぁ……」


そんな調子で夏休みの間はゲームをせずにダラダラしていた。

休みが終わると先生の怒号が待っていた。


「休みの間、一回もゲームしなかっただぁ!?」


「い、いやぁ……その……あはは」


「ゲームは義務教育だぞ!! それをサボるなんて国家反逆だ!」


「す、すみません……」


「理由を話してみろ」


「実はどのゲームにも飽きてしまって……」


「なに? だったら先生がゲームを支給してやろう。

 いい機会だし、他人の好みで選ぶのもいいものだぞ」


先生から大量のゲームソフトを渡された。


恋愛ゲームに、シューティング、スポーツに、アドベンチャー……。


どのゲームを見てもやる気が出ない。

まるでトリックを見せられた手品のように、プレイした先の期待感が持てない。


「いつからだろうなぁ……どうしちゃったんだろ」


大量のゲームソフトを抱えて気が重い。


どのゲームも「つまらなくはないが、新しくもない」といった状態で、

確実に売れるゲームを作ろうとする反面、変わり映えしなくなったからか。


それでこの既視感があるのかもしれない。


「あーーもう! ずっとやりこめて、毎日変化があって、終わりのないゲームってないのかな!」


そんなのがあればずっとプレイして、ゲームをサボって怒られることもなくなる。

でも、そんなのあるわけがない。



「いや待てよ……? いっそ作ってしまえばいいんじゃないか!!」



まさに逆転の発想。


自分で、自分のためのゲームを作ってしまえばいい。


ずっとやりこめて。

難易度は高めで。

永遠にやりこめるゲーム。


「リアル人生ゲームにしよう!

 仮想空間で別の人生を体験できれば終わりがないし

 やりこみ要素だっていくらでもある。ぴったりだ」


開発をはじめると自分でも驚くような速度で進んでいく。

本当はもっと難航するかと思ったが、これもモチベーションのなせるワザか。


ゲーム機を開発すること数日。

ついに人生シミュレータのゲーム機が完成した。


「できた!! これで永遠にゲームができる!!」


完成したゲーム機をセットしようと開かずの押入れを開けた。




「……あっ」



押入れには2台目のゲーム機が置いてあった。

いや、ただしくは「最初に作った」人生シミュレータか。


そしてやっとすべて思い出した。



「そうだった……。この世界でもうゲームしかやることないから

 人生シミュレータを作って、その世界にいたんだっけ……」



最初に作った人生ゲーム機のスイッチを切った。



今まで見えていた風景がなくなり、

世界にたたひとり残された現実に久しぶりに戻ってきた。



さて、次はなんのゲームをしようか。


俺は現実から目をそむけるようにゲームの電源を入れた。

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