第2話

この話も記録しておこう。


今から20年以上前で、僕が30代前半の頃、会社の夏休みに、妻と友人の3人で東北の旅に出た。八幡平などレンタカーで周り、青森の恐山の麓の方に泊まった。昼間は良い天気だったが老人ホームに着いた頃は雲が重くのしかかっていた。


使われなくなった老人ホームが格安で宿泊に提供されており、出迎えた管理人は夜には帰った。しかも、我々3人の他に宿泊客はいなかった。平屋でそこそこ大きく、入り口には鳥の剥製が有った。


庭はかなり広く小学校の校庭ぐらいあったが老人ホームの反対の方には洋風なのだけど六角堂といった趣の変な建物が建っていた。


辺りには民家も何も無く、山の麓の樹林が連なっていた。近くに露天風呂があるのは聞いていたので、3人で出かけたが、灯りもなく真っ暗、少し山手に入って温泉が見つかったが、暗闇の中の風呂は気味が悪かった。水が真っ黒で中に何かあるような嫌な感じ。余りリラックスも出来ず暗い中を老人ホームに帰った。


部屋は元々の老人ホームの名前が残っていて僕ら夫婦は図書室と言う、実際は六畳ほどの部屋に、友人はリハビリ室と言う部屋に寝ることになった。隣の部屋である。


庭の隅の六角堂が気になり何かいるのでは、何か出てくるのではなどと煩悶しながら朝を迎えた。


何も起きなかった。


翌朝は好天だった。朝は管理人が来て食事を用意してくれて、3人で朝ごはんを食べたが、友人はカンカンである。


「お前たち、やっていい事と悪い事がある。冗談にもほどがある!」


心当たりがなくなんのことを言っているのか聞くと


「おかげで夜は全く寝れなかった。夜中の間中、俺の部屋の前を行ったり来たり歩き続けるってどう言うことなんだ!ずっと足音が聞こえていて寝れなかった」


僕は、気味の悪い老人ホームの外に夜中に出るなんてあり得ないし一晩中とか無理でしょ、と返すと一気に友人の顔色は悪くなり「それはそうだ。じゃ一体誰が?」。しかも、隣の部屋で寝苦しかった我々夫婦は全く音を聞いていない。


後味悪くこの日の予定の恐山に行くためにレンタカーに乗り込もうとしたら友人が悲鳴。見ると頭の毛の中にスズメバチが!


刺さずに飛び立ったが何だったのだろう。今も偶に思い出す。

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ホワイトハウス tamatama2 @tamatama2

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