ホワイトハウス

tamatama2

第1話

心霊現象のメッカとしてキングクラスの有名な場所、ホワイトハウス。

新潟県日本海側、人気の海水浴場、キャンプ場から本当に少し山側に入ったところ。此れほど行きやすい心霊スポットも珍しいかもしれない。

大学生の頃だから、なんだ30年も経つのか。夏休みに友人の一人が住む新潟県に友人二名と妻の三名で遊びに行き、以前からその心霊現象について聞いていた通称ホワイトハウスと呼ばれる白い一軒家に向かった。

新潟県出身の友人Iは全くの実話としてエピソードを話してくれて、実際テレビのホラー特集や怪奇実話集の本などでもホンモノとして何度も紹介されている。

逸話としては、裕福な家の子供を何かの理由で隔離をしていたが、ある日両親が死体で見つかり、その子供が行方不明で未だに見つかっていないという話。やんちゃな地元の若者たちが肝試しで訪れては、何も起こらずバカにして帰ろうとして後ろを振り返ると、白い家の二階から若い女の子に覗かれただのの話が多く伝わる。それで帰りに事故に遭ったとか、周辺の話もうず高く積もっている。

ただ、友人は人伝ての話で、本やテレビで知った話ではなく本当に怖いのだ、と話す。

此れは矢張り実際に見てみたい。

観光地である海水浴場に来ると快晴で家族連れも多くいて賑わっている。キャンプ場で準備をする人たちも大勢いてとても恐怖のスポットには見えない。

其処から、直ぐ海岸線沿いに僕たちの車が走ってきた高速道が少し土手になった感じで水平に走っている。その高速道路かを声て山側に行けば直ぐにホワイトハウスだ。

道路の下のトンネルだから向こうも見えているし長さは数メートル。気楽にトンネルに入った途端。重い。

重力異常のような重さ。足が進まない。僕だけでなく、全員が感じた。

しかし、賑やかで楽しい海水浴場から数歩来ただけ、さすがに引き返さない。

トンネルを抜けると、

今にも雨が降り出しそうというよりはこの世の終わりのような曇天。

いや、数メートル手前のトンネルの手前の海水浴場は快晴だよ。其処から、斜面を少し登ったところに二階建ての一軒家が見える。よくある建売のような家だ。子供を隔離するために建てた、という。ただ、骨格は残っているが、あちこちに穴が開いている。

嫌な感じは全然無くならないがとりあえず家に近づく。

中がすぐに覗けるというか、壁もかなり朽ちていて出入りも自由だ。ホワイトハウスの中の床は全て抜けて暗い軒下が見える。二階に上がったりは無理だな。いや、ここでは何も現れなかったよ。少なくとも、僕はみていない。妻と友人3名に僕を入れて5名。みんな見ていないと言っていた。一階に入ってみたが二階に上がるのは階段も痛んでいて難しく其処で外に出た。

周りを見てみようと斜面の途中に立つ家の横を更に少し登って家の上側に行こうとしたあたりからおかしくなった。

突然モーター音が響き始めた。と言っても車やバイクがあるわけでなく、分類すれば、モーター音としか言いようのない、音というよりは振動と言った方が当たっている現象が辺りを覆った。或いはいきなりそう言う次元に迷いこんだ感じ。全員、顔を見合わせ、絶対ここにいてはダメだと直感的に悟った。

斜面を駆け下りて高速道路の下のトンネルから向こうに逃げたい!

其処からは何故かスローモーションの中を動いているように進まない。連れ去られそうな異様な物理空間。デイビッド・リンチのブルーベルベットやツインピークスのロッジの様なあり得ない法則に支配されたエリア。何とかトンネルに入ると、またズンと重力が襲う。数メートル。長い長い数メートル。

抜けた途端。軽い。快晴。海水浴客の嬌声。

帰りの車の中では話も弾まない。

そして、Iの家に着いた。

二階建てのよくある家だが、彼の部屋のある二階に上がる階段で、妻は上の階から覗き込む覚えのない若い女性を見た。見たらしい。僕も友人も誰も気がつかなかった。

結果的には、その時のメンバーに何か災いがあったりとかはなかった。とは言え、このかなり異常な体感を後で照合すると同じ様に感じていたことは事実だ。オチはない。ただただ感触を覚えている。

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