Ep.5

ピシリ、とヒビの入るような音。

―世界が悲鳴をあげている。

舞依、いい子だから。世界を救うんだ。……言い聞かせるように、心で呟く。

人にも幽霊にもなりきれないあたしは、みんなから「まだ生きている癖に」と妬まれて、僻まれて、悲しかった。でも、この透けた体では何にも触れないし、地面に立つこともままならない。そんな風になってから、どれくらい経った頃だっただろう。

そう、多分、一週間。

幽霊歴が一週間に到達してしまった頃、みんながぞろぞろと引き上げていくのに気付いた。

「ね、ねえっ、みんなどこ行くの!? 置いてかないで!」

あたしの声は、誰にも届かない。

「ねえってば!」

声を張り上げると、近くにいたおばさんの幽霊が、面倒臭そうに振り返った。

「あんたみたいな半端者、連れてけないよ。私らはね、世界滅亡だから魔界に戻ってこいとの閻魔大王様からの通達を受けて、魔界に帰るところさ。」

吐き捨てるような言葉。

……世界、滅亡。

「世界が、終わる……?」

「子供にはわかんないだろうね」

「舞依、もう11歳だよ」

「まだまだ全然子供さ」

おばさんはそれだけ言って、他のみんなとどこかへ行ってしまった。一人残されたあたしは、立ち尽くすまま。

「やだ……舞依、世界終わるのやだ……」


それからあたしは、泣き続けた。幽霊だからか、体力とか関係なくて、いつまででも泣いていられた。

そうしたら、お兄ちゃん―結城湊さんが、助けてくれた。

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世界が終焉を迎えたことを俺は知らない。 輝夜 @murasaki_kaguya

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