魔物や自分への悪意を遠ざける「ギフト」のせいで、幼なじみとの冒険者パーティーをクビにされた10歳の少年が、ロバを相棒に旅に出るというお話。
ハードな描写も凝った設定もなく、一見して淡々とした作品なのですが、なんというか、読んでいて自分自身の初めての一人旅のことを思い出すような、不思議な魅力のあるお話です。ハードな描写は無いと書きましたが、旅立ちのための荷造りや手続きなど、地味なディティールがおそろかにされていないからでしょうか。
ギフトのおかげで安全な旅ができるので、道中子どもやお年寄りがついてきたり、間が抜けているけど気のいい大人がまわりに集まってきたり、という肩の力が抜けた展開もいい感じです。
登場人物のキャラクターが全員朗らかなので、不覚にもそちらにも癒されてしまいます。疲れているときに読んだので、ちょっと泣きそうになりました(マジで)。
ちょっぴり特異な体質の所為でぼっちになってしまった主人公。
せっかくだから冒険はやめてやりたかったことをやろう!
とっても前向きです。
特異体質のお陰で安全はほぼ担保されています。
お利口な相棒ロバのポックルを連れてのんびり旅。
ダンジョンがあるから寄っちゃおうか♪
……とってもお気楽です。
そんな彼が何となくダンジョンに入って行った結果。
うわああああぁぁっっっ! な事態に!!
それでもやっぱりお気楽な主人公と、愉快で魅力的な登場人物たち。
彼らが繰り広げる、まったりほっこりダンジョン生活。
そんな彼らにやがて訪れる危機。
とっても素敵なダンジョンを、あなたも是非覗いてみてください♪
軽やかな文体で描かれる、ほのぼのコイルの旅路は微笑ましくあたたかで。それでいてしっかりと考えられた設定に支えられた素晴らしいお話です。
舞台はちょっと変わった異世界「第二の人生」。
そこに暮らす人々は、前世で残した様々な想いから「ギフト」と呼ばれる能力を発現しているのですが……。
最初はのんびりと旅をし、コイルの気ままな暮らしについていくテレビ番組な気分。
そこからちょっとダンジョンに寄ってしまって。
それから、それから? ――ええ、まさかそんな話になるだなんて。
笑いあり涙あり。
がっつり戦闘もやるよ! コイルがんばる!
ボッチなコイルが成長していく様と、脇を固める仲間たちに心躍る、バラエティ豊かで心温まる物語は是非読んで体験して欲しい。
読み始めて気が付けば、コイルが頑張って創り上げていくすべてに愛着を持ってしまう。
あなたも、彼らを見守る立派な仲間の一員になりませんか?
その旅路に寄り添うだけで、誰もが読んだ後に幸せな気持ちになれる。
この作品に出会えて良かったと心から思える逸品です。