10月7日 何者なのか
最近、自分のことを考えることが多い。少しだけ現実と向き合う余裕ができたのかもしれない。
自分が社会生活を送れないことを、自分が自堕落だからと思えばいいのか、精神病だからと思えばいいのか僕にはわかっていない。僕は健常者と言うには破綻しているけれど精神病患者と言うには普通すぎる、と僕は思っていて、僕は誰かに自己紹介をしなければならなくなったときになんて言えば良いのかが本当によくわかっていない。
仮に自堕落な生活だから社会生活を送れないとして、それは「生活が社会生活や対人コミュニケーションに支障がある状態」という人格障害の定義に当てはまるので結局どっちに転んでも精神病者と言えなくもないのだけれども、そういう頓智のような曖昧な専門用語のこねくりまわしは実社会と古い人には通用しないし、ゆとり世代以降の情報量に溢れた社会でことなかれとリベラルを重要視するように育てられた人にだって結局は「わからないから触らない」で終わりだ。誰も僕を救ってはくれないし、水底から社会の上に掬ってもくれない。他人にそれをどう伝えるかなんてものは何の意味も持たない。強いて言えば自分が何者なのかわからないというのは重いの他辛いということと、誰かにわかってもらえることが自分にとって大きな救いであって僕はそれをいつも求めてしまうということが、僕が自分が精神病者なのか健常者なのかにもやもやする理由なのだと思う。
そんなことを言いたいなとぼんやり考えながらTwitterのテキストボックスを眺めているとき、ふとぼんやりと思い浮かんだ。僕が自分の生き方についてを常々考えて研鑽に励むことこそが自分の幸福につながると本気で思い実践していた頃、僕がいつも自分がまだ「普通に生活してた頃」といつも言う大学1年生の夏までだったら、僕は迷わず自分が自堕落なせいだと思っていただろうなと。そして自堕落ならばどうするかという次の問いにもっと努力するべきだと答えていただろう。そのギャップが自分には少し面白かった。今だったら絶対にそういう回答はしないだろう。仮に自堕落なせいで何か問題があったとすればそこから逃げる選択肢が真っ先に思いつく。シロクマが無理にハワイに居ることは無い。北極に帰れば良い。そういう選択肢。
それが良いことなのか悪いことなのかはわからないけれど、普通の人ってそういう感じなのかもしれないとは思った。どういう感じなのかというと、大きな流れに乗っているのだ。僕が自堕落を努力で改善して問題に対処するだけの価値が僕が当時乗っていた流れの中ではあったのだ。あるいはそうすることで流れからはみ出さずに済んでいた。同じ地域に住み同じ学校に通い同じ志を持った人間と同じ組織に属し同じ時間を過ごしながら各々の目標に向かっていく流れは、きっと会社に入ったり社会に出てからも色と趣を変えながらも存在していて、人はその流れにある内は安心することができる。いくら問題や不安があってもその安心を否定することは多分できない。そして他方ではその流れは堆積の上にあって、自分が今まで得てきた信頼、親からの愛情、努力の末の実績、培った能力、人と共に過ごした時間とかそういう、マクロとしての大きな流れとある意味対照的なミクロとしてのその人その人の個人のパーソナリティーと今までの堆積が、流れの中で生まれていく。
僕はその流れから落ちてしまったような気持ちで居る。とても感覚的な話だけれど、それが僕が一番書きたかったことだ。その大きな流れというのは、もしかしたら社会のことなのかもしれない。流れの中にある内は、堆積ができる。信頼、愛情、実績、能力、人との時間が自分の中に積み重なっていく。そして流れの中に居る人は何者かであることができる。そしてそのことに普段は意識もしないけれど安堵していいる。それを僕は両方失ってしまって取り戻せない。服を買いに行く服がないように、お金を増やす資本金がないように。子供の頃親に乗せてもらった流れとそこから積み上げてきた人間性の喪失が僕にはひどく致命的だったように思うし、多分誰しもにとってもそうだと思う。僕でなかったとしても、立ち直ることは難しい。
僕の中で人間は、流れに乗れている人間と、流れから外れてしまった人間にもはや二分されてしまっている。そして僕は後者なのだ。
雑記 二階堂くらげ @kurage_nikaido
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