第2話 餓死しそうです
僕は、この世界の情報を収集しているときに気づいたことがある。
それは、生活するにも、魔王討伐にも必要で、夢すらも手に入れられるもの。
それがなければ、一週間かからずに死んでしまうもの。
そう、
「金がねえ!」
周りの人がこちらを向くが、そんなことは気にならない。
ふざけんな、あの駄神!
ドラ〇エの王様だって120Gはくれたぞ!
世界救う前に餓死するわ!
僕はイライラしてポケットに手を突っ込んだ。
すると、手に何かが当たった。
取り出してみると、何か書いてある紙と、硬貨だった。
もしかして、これは金ではないだろうか。
3枚しかないのが気になるが、種類がわからないことにはどうにもならない。
僕は、とりあえず紙を読んでみる。
『伝え忘れたことがあったので慌てて送りました。
一つ目、あなたは魔力飛行ができるようになっています。
二つ目、その世界のお金の種類を描いておきました。
感覚的には、1プルトス≒10円』
空が飛べるというのは気になるが、それより今は金である。
下に7種類の硬貨の絵が描いてあった。
1プルトス硬貨は、表裏にそれぞれ花の絵が描いてある。
5プルトス硬貨は、表に本の絵、裏にこちらの文字で5と書かれている。
10プルトス硬貨は、表におそらく偉いのであろう、人物の絵、裏に同じく10と書かれている。
100プルトス硬貨は、表によくわからない紋章、裏に建物の絵が描いてある。
1000プルトス硬貨は、表に何かの動物、裏にさっきと同じ人が描いてある。
10000プルトス硬貨は、またもや表裏にさっきと同じ人が描いてある。
これらの金は全世界共通らしい。
これらを踏まえて、先ほどの硬貨を見てみる。
表裏花の絵の硬貨2枚と、裏に10と書かれた硬貨1枚。
よって、合計12プルトス。
金欠かあの駄神。
つーか、1プルトス≒10円てことは、12プルトス≒120円じゃねーか。
ドラ〇エとぴったり当ててくんじゃねーよ!
ド〇クエの時も『世界を救ってもらおうっていう勇者に120Gしか渡さないってどんだけ財政難だよ』と思ったけど、駄神のほうがよっぽどだわ。
貧乏神かあいつ。
「とりあえずこの金で何か買うか」
この程度の金で買えるものなど高が知れているが、ないよりはましだ。
さっきから、腹がすきすぎてヤバイし。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
商店街まで来たはいいが、知らない食べ物が多すぎて困る。
『グロニクス肉のステーキ』や『ゲロングの白焼き』など全くもって食欲をそそらない。
『グロニクスの肉』とか怖いんだけど。
ここは無難に野菜炒めのようなものを食べるか。
野菜も知らないものが多いが、ほかのものよりましだろう。
しかし、金がない。
12プルトスで買えるものと言ったら飲み物ぐらいのものだろうか。
でも、水だけではつらい。
では、どうするか?
料理ではなく、食材を買いに行くか。
でも、どこで売っているんだろうか。
「キャー」
途方に暮れているといきなり悲鳴が聞こえた。
僕は悲鳴の聞こえた方向を見る。
そこには、大きな剣を持った男3人が飲食店で「さっさと金を出せよ、あーん?」とか言ってた。
どうやら強盗のようだ。
それを理解した瞬間、あの光景がフラッシュバックする。
銀行で僕が強盗に殺された瞬間。
ふつふつと僕の中で怒りがこみ上げてきた。
「ふざけんなよ!」
僕は駆け出した。
すると僕の体は目視できないような速度でその店に突っ込んだ。
自分でも驚いたが、すぐにこれが『異世界においても驚異的な身体能力』なのだと理解する。
いきなり壁が破壊され、唖然とする客と強盗。
「あーん!?おらぁ!」
10秒程の間が空き、我に返った強盗がこちらに襲い掛かってきた。
大剣の単純な降り下ろし。
それを僕は左に避け、回し蹴り。
もちろん、一連の動作は目視不能。
もろに背中を蹴られた強盗は吹っ飛び、壁を破壊して外へ飛んでいく。
「だ、誰だてめぇ?あーん?」
たぶんリーダーであろう強盗Aが訊いてくるが、無視。
強盗Aに向かって突っ込んで正拳。そのまま右にいた強盗Bに向かって裏拳。
ほぼ同時に強盗どもは吹っ飛び、「あーん?」という断末魔とともに戦闘不能。
大勝利。
と、いきなり拍手が鳴り響く。
客たちや通行人たちが我に返ったようだ。
周りからは、「ありがとう」「やるな兄ちゃん」「すごい」などの声が聞こえてくる。
なんかすごい達成感。
すると、店の店主であろう人が前へ出てきた。
「すいません、壁とか壊してしまって」
とりあえず、謝る。
「いいんだよ、壁なんてすぐ直せる。
それより、本当にありがとう。
あいつらは有名な強盗グループでね、簡単に人を殺すような奴らなんだ
でも、今回、死人は出なかった。
君のおかげだよ、本当にありがとう。
なにかお礼をしたいんだが...。」
「じゃあ...」
そろそろ限界で死にそうなので。
「飯下さい」
一瞬、周りは唖然とするが、すぐに笑いで満たされる。
「そうかそうか、あいつらを倒した報酬が飯か。
なら、腕によりをかけてご馳走をつくらないとな!」
店主が大きな腹をポンッと叩きながら言った。
僕は、ご馳走に期待を膨らませながら席に着いた。
異世界来たからちょっと無双してくる 氏神様 @____-
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