異世界来たからちょっと無双してくる

氏神様

第1話 異世界行ってくる

ドアを開けて外へでる。

まだ日も登っていないにも拘らず、あつい。


今日は8月31日。夏休み最後の日だ。

しかしまあ、不登校の引きこもりである僕には関係のないこと。

高校に入って1年ぐらいは普通に登校していたが、2年生ごろから徐々に不登校尾気味になり、

高校3年の今では全く持って学校行かず、毎日家でゲームやらネットやらをしてる。

自分でもこれではだめだとわかっているのだが、いまさら何かを変えようとしても難しいものがある

何せ僕は48時間ぶっ通しでゲームをする、という偉業を成し遂げたほどゲームにはまってしまったのだ。

他と比べてもかなり重度の引きこもりなのではないか。


ではなぜ、引きこもりの僕が外出したのか。

答えは、『ただの気まぐれ』だ。

なんとなく外に出たくなったので外へ出た。目的なんてない。

ただただ歩くだけ。

周りの景色を見ながら歩く。

半年見なかっただけでかなり懐かしいな。


ふと右に目をやる。家のすぐ近くにある銀行だ。

まあ、当たり前だが何回か来たことはある。

しかし、中が騒がしい。

銀行ってこんなに騒がしかったっけ?

いやいや、半年ぶりぐらいに外出したから、外の音がうるさく聞こえるだけだ。

すると、いきなり銃声が聞こえた。

やばい、ヤバい、ヤバイ。警察?警察だよな?

確か110番だったか。

携帯を取り出し、1、1、0とダイヤルをする。

プルルルルというコール音が何回か鳴ってから、ガチャリと音がした。

「すみません、警察ですか?いま銀こガハッ!」

体が崩れ落ちた。恐る恐る胸部を見ると服は真っ赤に染まっていた。

激痛が走る。


「グ・・・ガッゴフッ」

血を吐きながら僕は倒れる。

薄れる意識の中で犯人を見る。

そいつらはこちらには目もくれずに、急いで車に乗って逃げていった。

走馬燈が駆け巡る。

まだ幼いころの記憶。

友達と遊んだ記憶。

今は亡き親の記憶。

短い人生だったな・・・。





・・・・・・・・・・・・・・。

僕はふと目を覚ました。

目が見える。

音が聞こえる。

肌にあたる服の感覚もある。

・・・生きている?


ありえない。あんな状態ならほぼ即死のはずだ。

ふと自分の胸に目をやった。傷はない。血もついていない。

生き延びたうえにあれが治ったというのか?

それこそ、ありえない。

即死するような傷がきれいさっぱり消えるはずがない。

ならばここは死後の世界というものなのだろうか。

僕はそういうものを信じないタイプだったのだが、こうなると信じざるを得ない。


「こんにちは」

「うわっ!」

いきなり後ろから話しかけられた。

振り向くとそこには、ド〇クエの賢者みたいな恰好をした、顔立ちの整った女子がいた。

年は15歳程度だろうか。

「申し訳ありません。驚かせてしまいましたか?」

「いや、まあ、はあ」

何と答えればいいのかわからず曖昧な返事をする。


「では、改めまして。こんにちは、常間 稲取さん。

私は、スフェラ。神様です」

ああ、この子は頭がおかしいのか。

かわいそうに。

「なんでそんな憐れむみたいな目で見るんですかっ?

本当に神様なんですよ!」

「うんうん。わかった。

で、何か用ですか、カミサマ」

「その憐れむような眼をやめてください!」

これ以上言い争うのも嫌なので、今はとりあえずカミサマってことにしてあげる。

カミサマはわざとらしくゴホンと咳払いをした。

「常間さん。あなたにお願いがありま「嫌だ」

めんどくさそうだから、速攻で断る。


「なんで即答するんですか!内容どころか、『あります』すら言わせてもらえないんですか!」

「『めんどくさいことは全力で拒否する』が僕の座右の銘なんでね」

「それただのクズ人間じゃないですか」

なんて失礼なことを言うんだろうこの子は。


「いいですか、内容を言いますよ?

今、あなたの生きていた世界とは別の、いわゆる異世界において。

魔王を名乗る悪魔とその手下の軍勢が世界征服を計画し、人間界へ侵攻してきています」

「魔王が世界征服とは、またベタな。

というか何?その素敵ワールド。魔法とかあったりするの?」

「あります。あなたにはその異世界を救ってほしいん「やります」

だからなんで即答なんですか!人の話を聞けないんですか!...え?やります?」

「あたりまえだろ。RPG的展開に乗らないわけがないだろ!

なんで早く言ってくれないんだよ」

「それはあなたのせいなのですが...。

というか、行ってくれるのですね?本当ですね?」

「ああ」

異世界に行けるとは夢にも見ていなかった。ありがとう、銀行強盗。そして死ね。


「では、あなたに二つの力をあげましょう。」

カミサマは僕の頭に手をかざす。

すると暖かい光が

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」

激痛とともに僕を包んだ。

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

「我慢してください。もうちょっとです」

「ふざけんな。そのもうちょっとの間に僕死ぬぞ!?」

「大丈夫です。もう死んでます!」

あ、そうだった。って痛いのに死ねないってつらくね!?

生き殺しならぬ、死に殺し。

「終わりました」

カミサマがそういうと、光は激痛とともに僕の体から消えていった。

「はあ、マジ死ぬかと思った」

まあ、もう死んでるけど。


「あなたには、時間操作の能力を授けました」

「時間操作?マジで?」

「マジです。もう一つは身体能力と魔力ですね。

こちらの世界はもちろんのこと、異世界においても驚異的な身体能力と魔力です。

あと、あちらの言葉も覚えていただきました。

では~。異世界の旅へ~。行ってらっしゃ~い。」

いきなり、ディズニーラ〇ドのスタッフみたいなことを言い出した。

「ってちょっと待てよ!!ふざけんな!もうちょい教えることとかあるだろ!」

「お金の単位はプルトスです」

「ちげえよ!もっと大事なこと色々あるだろ!って待て!

魔方陣展開すんな!ちょっま、待ってください、お願いだから」

「行ってらっしゃーい」

「待てーーーーーーーーー!」

そこで、視界がブラックアウトし、次の瞬間目に飛び込んできたのは、町の景観。

なんだかんだで僕の冒険は始まった!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る