別れ路

ぽつり、ぽつりと

滴る漿果ベリーの実を摘んで

暗緑の奥深くへと分け入れば

疾うに散りたる花の遺書

甘く、酸い

未練を縷々と靡かせて

闇を泳いだ足跡に

咲いたであろう勿忘草


凍野に糧を求めた筈が

春を覚えて心はかつ

天鵞絨ビロードの茂みに落とす紅涙で

孤悲を弔う手負いの獣

冷厳の眸が零す独白さえも

種と芽吹かすこの森に

私は何を飾るのだろう


霧に溶かした月影の

精油を土に塗り籠めた夜

胸懐を儚く乱す

静けさですら狂おしく

想いひと粒

枯れゆく頃に逢えるのならば

この諦めに朽ち葉を被せ

きみに別れを告げようか

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彩果ての夏 近野弓鹿 @YumicaKonno

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