第39話 ヒロインの魅力と伏線とクライマックス

会議室に通されると、編集の方は資料を抱えてセカセカと早足で入ってこられました。

編集の方というのは、お忙しい方が多いですから、それが癖になっている方が多いのでしょう。


名刺を交換し、簡単に挨拶をしてから、打ち合わせのはじまりです。


「まずですね、こちらの資料を用意してきました」


このセリフは、相手の編集の方です。

正直なところ「お?」と意外に感じました。相手の方で資料を用意してくるというのは、想定外だったからです。こちらもA4で数枚資料を用意していたのですが、あまり主張するのも先方の面子を潰すと思い引っ込めることにしました。


資料はワード書きでした。自分はついパワーポイントやエクセルを使ってしまいますから、このあたりは業界の慣習、紙の文化の延長ということなのでしょう。


今後、別の打ち合わせをすることがあれば、相手に合わせてワードにした方がいいかもしれない、と強い印象が残りました。

資料は自己主張するためでなく、相手の理解を助けるためのものですから、見慣れた形式に越したことはないはずです。


「内容については、修正したほうがいい部分はかなりありますね。特に伏線、ヒロイン、クライマックスの盛り上がりは全面的に手を入れたほうがいいです」


断言するような口調でしたが、頷けることばかりでした。もしビジネス書という形式にするとしても、話自体がつまらなくて良い理由にはならないからです。


そして、伏線とヒロイン。これは前の編集の方と同じように指摘を受けました。個人的には今のサラちゃんが大好きなのですが、ラノベのヒロインとして見た場合は「個性が足りない」ということなのでしょう。


個人的には胸が大きくて口調に特徴のあるキャラというラノベヒロイン像に食傷気味で「のじゃ」「ですぅ」「はわわ」などとは絶対に言わせたくなかったのですが、何らかの手をうたねばならないかな、と思わされました。


クライマックスへの言及は初めてうけましたが、これは伏線との繋がり、ということだと理解しました。

異世界コンサル株式会社の物語の構造は、問題解決であり、ある種推理モノと同じ構造を持っています。


事件が起きて、その解決方法がわからない、そこへ颯爽と名探偵ケンジが鮮やかに解決、という構造です。

事件を解決するツールが推理力とトリックでなく、経営学の知識と論理という違いはありますが。


小さな問題解決を続けて読者を惹き付けつつ、最後に全体の大きな問題を解決すればいい、というアドバイスだと理解することにしました。

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