第31話 交渉の終わりと不思議なこと
「例えば、冒険者パーティーの経営を支援します!という本をビジネス書として出せることになったとして、一般書店のビジネス書のコーナーに置いてもらうことは可能でしょうか」
これは私にとって核心となる質問です。
なろう書籍のガチャとして拾われ、商売の理屈として手をかけることが損だと考えれるならば否定されるでしょうし、なろう書籍であってもビジネス書という分野に投資するだけの根性があれば肯定される質問です。
根性、というと前時代的に聞こえますが、新規分野への投資というのは根性の問題だと思うのです。
ある大手自動車会社の投資が高い確率で成功するので不思議に思った投資家が「なぜ御社の投資はことごとく成功するのでしょう?」と聞かれて「成功するまで投資するからです」などという笑い話とも実話とも取れる話も聞きます。
要するにリスクをとる根性がありますか?と聞いたわけです。
「正直なところ、難しいと思います」と編集の方からは率直な回答をいただきました。
これで実質的な交渉は終わりです。
あとの時間は、もう少し一般的な書籍化についての質問をすることにしました。
私が不思議だったのは、編集の方が説明資料のような紙を一切出す様子がなかったことです。
これまで卓上に載っているのは、肌色が目立つ冊子が何冊かと、拙作を印刷した分厚い紙の束だけです。
もし私が編集者の立場で、なろう作家のような新人と話をするなら、以下の資料を用意します。
・一般的な書籍化までのスケジュールとタスク表及び実例
・契約書ドラフトもしく特徴のサマリー
・著作を売れる内容にするための提案
・追加資料として他の出版社に対する自社の強み
表紙もいれてA4サイズで4、5枚程度の資料が予め用意してあれば、そもそも打ち合わせがこんなに長くなる必要がありません。
(ここまで話を進める間に1時間半近くかかっていました!)
多分、30分で終わります。
編集の方は、おそらく忙しい時間の合間を縫って何回も素人作家と面談をしているはずですから、説明が面倒くさくならないかな、と不思議だったのです。
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