第25話 紙の文化
四六判という言葉は初めて聞きましたが、サイズには馴染みがあります。
ビジネス書の場合は、そのサイズが普通だからです。
「仮に四六判で進めるとして、どのくらいまで内容が入るものなんでしょうか」
文字数で言われても、素人なので分量の目安がまるでピンと来ません。
「一応、こういうのは用意してきていまして」
と言いながら編集の方が取り出したのは、縦書きPDFから大量印刷された異世界コンサル株式会社(当時は冒険者パーティーの経営を支援します!)でした!
紙袋から取り出された分厚い用紙の束には、思わず仰け反ってしまいました。
「これ、何ページぐらいあるんでしょう?」と尋ねると
「そうですね、350~400ページぐらいでしょうか」と答えられたものですから、すっかり恐縮してしまいました。
何しろ、紙の資料とは重いものですから。
自分も偶にお客さん先に40ページの提案書を人数分、とか印刷して持っていくことがありますが、先方が「とりあえず全員に」式のミーティングを設定されると、それだけでうん百ページ分の重さになり、紙だけを郵便で送りつけたくなったものです。
余談になりますが、この「全部印刷した分厚い原稿の束」を手にミーティングをする、という光景は、これから何度となく繰り返されることになります。
紙の文化、というのが出版社には根付いているのですね。
電子化、ペーパーレス、システム化、という企業世界から来た外部の人間としては、非常に不思議な気がしたものです。
その分厚い紙の束を捲りながら、編集の方は「そうですね。四六版だと8章ぐらいになりますかね」
8章というと、伯爵家の佞臣文官ロロ邸の襲撃場面まで、ということになります。
その区切り方には少し異論がありました。
物語として、それでは収まりが悪いのです。
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