第24話 文庫と四六判の違い
ビジネス書では、表紙絵はそこまで重視されません。
正確にいうと、格好良さげな写真や有名人が掲載されていると売上は良いようですが、キャラ絵はむしろ敬遠の原因になるでしょう。
表紙絵を重視する、という視点で卓上に置かれた肌色の多い冊子をもう一度見直してみれば、また違う発見がありました。
少しばかり薄着ですが、確かにキャラクターの魅力を引き出すようなポーズや衣装が工夫されています。
パラパラと捲ってみれば、中の挿絵もキャラクター中心でイメージを補完できるようになっています。
一瞬、昼間のファミリーレストランで、おっさん2人が桃色冊子の挿絵を真剣な顔をして観察する図、というイメージが頭に浮かびましたが、これは仕事なのだから、と今度は自分をコントロールすることに成功しました。
「あとは、四六判だと本屋の店頭から撤去されにくい、という事情もあります。文庫は回転が早いですから」
(※注:このあたりの事情は、実際にはレーベルや店舗により色々と違いがあるようです)
「文庫は回転が早い、ということは売れないとすぐに撤去される、ということですか?」
「そうです。最短だと1ヶ月で撤去されます」
どんどん新作が投下されるチャンスに満ちたラノベという世界は、言い換えればどんどん既存作が撤去されていくリスクに満ちた世界、という意味でもあります。
チャンスとリスクは表裏一体。生物で言う多産多死、が基本戦略になるわけです。
すぐに撤去されるのは困るなあ、というのがその時の率直な感想でした。
「あとは文章量が違います。文庫だと10万字から12万字。四六判だと20万字ぐらいになりますね」
文章量は重要です。先だって書いたようにWeb出身者は字数管理に甘い面がありますから、10万字の中で、きっちりと山場をつくりストーリーをきりよくまとめられるのか。
そもそも自分の作品の字数すら数えたことのなかった自分には、とてつもない高さのハードルに見えました。
なんとなくですが、文庫よりは四六判が良いのかなあ、と自分の意見は傾いてきました。
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