第23話  本の仕様を定めよう

いざ、自分で出版戦略を考えてみよう。


そう考えたところで、業界の素人である自分には、そもそも考えるための手がかりがありません。


そこで、最初に本の仮仕様を定めることにしました。


考えるべき要素を多すぎて思考の方向性が定まらない時は、そうしてアンカーとなる点を、えいやと決めてしまうと全体像がスッキリすることがあります。


まずは本という製品の姿をハッキリさせることで、それに続く戦略を整理する手がかりにしようと考えたのです。


「もしビジネス書で出すとしたら、どういう本になるんでしょう?内容はおいておくとして、大きさとか重さとか・・・」


本の内容については、ビジネス書に関しては自分の方がハッキリとイメージできている自信はありました。

ですから、それ以外の要素について専門家の知識を借りようと考えました。


「大きさはヨンロクバンがいいでしょうね。絵が大きくなりますから」


四六判、という言葉はその時初めて聞きましたが、要するに大きいサイズのことだというのはわかりました。


「絵が大きいというのは重要なんでしょうか?」


ビジネス書の世界で言うと、ほとんどの本が大きくて重いものです。

特にファイナンス系の最新の訳書は分厚く重く、持ち歩くのに苦しめられた思い出があります。


私が三枝三部作を評価するのは、その内容の密度もさることながら、文庫本である、ということも関係していました。

文庫サイズであれば鞄に入れて隙間時間に読むことができたからです。


「冊子が大きくなると値段が高くなりませんか?そうすると部数が出にくくなるのでは・・・」


本の売り場に行くと「シリーズ◯十万部達成!」などという帯の本が目につきます。

何となく出版業界におけるTV視聴率のようなもので、重要視される要素だという意識がありました。


そうした懸念を、編集の方は次の言葉で否定しました。


「Web小説の読者は表紙の絵のためにお金を出すんです。Webで内容は知っていても、表紙の絵を手元で保存したいんです。それなら、絵は大きい方がいいでしょう?」


表紙絵のために本を買う。これは私にはなかった視点です。思わず膝をうちました。

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