第22話  戦略は自分で考えるもの

意見の隔たりのある2人で意見を交換するには、最初に言葉の定義を固めたり、成果のイメージを共有する必要があります。


映画やアニメではストーリーボードといって、作品イメージを象徴するための絵を最初に制作したりしますよね。

私も「ビジネス書」と言っても様々なもので出ていますので、エンタメ系でストーリー性の高いものとして、最初に「こんなビジネス書にしたい」というものを幾つか上げてみました。


「例えば、もしドラなんかは上手くいった事例ですよね」

「あれですね!知ってます、知ってます!確かに、あれならできそうですね」


言わずと知れたベストセラーです。編集の方も、イメージはつかみやすいようでした。


「あとは三枝三部作の、V字回復の経営とか、戦略プロフェッショナルとかストーリーいいですよね」

「他にも、ザ・ゴールは名著ですよね。あの本の構成は真似したいですよね」


そこまで言いかけて、途中から自分だけが喋っていることに気が付きました。

どうも編集の方は、そうしたビジネス書を読んだことがないようでした。


念のため編集の方の名誉のために付け加えます。

実はこの時以降も何度か別の編集の方に会う機会を得ることになるのですが、どなたも三枝三部作とザ・ゴールを読んだことのある方はいませんでした。

サラリーマンにはわりと読まれている本なのですが、ラノベ系の分野では単に畑違いだったのかもしれない、と今では思っています。


とはいえ、当時の自分は(この編集の方はあまりビジネス書には詳しくないのだな)と感じてしまったのも事実です。


そうなると、今回の会合の目的を「ビジネス書の出版戦略を聞く」のではなく、より能動的に「自分の考える出版戦略が出版業界の常識として可能なのか、そして有効なのか」という方向に変える必要がでてきます。


聞き役から壁打ちへ、の変更です。


これまで聞いた出版業界の情報を総合して、自分で作戦を練ることにしました。

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