第26話 物語の区切りと削り

話の区切りにこだわったのは、四六判を選択したこととも関連があります。

なろう小説の現状からして、自分の本が仮に一冊だけの刊行になった場合のことを考えたからです。


異世界コンサル株式会社の主役であるケンジは、足の怪我で冒険者を断念し冒険者を支援する事業を始めます。それから様々な経験の後、冒険者の共同墓地を建設することと、教会の奇跡によって足の治癒が果たされる。

いわば、冒険者を救い続けたことによって最終的に自分も救われる、という構造があるわけです。


「ですから、できれば教会の出番は作りたいのですが・・・」


そう訴えると「すると、わりと削ることになりますね」と反応が返ってきます。


「削る」。Web発作家の、もっとも苦手な作業です。


特に自分の場合、好き勝手に書き散らして、前に出てきた要素を後からピックアップして伏線だったことにする、といういい加減なプロットの書き方をしてきましたから、自分でもどこに伏線を仕込んでおいたかわからなくなっていました。

なので「この要素は要らないな!」と削ってしまうと、後から辻褄が合わなくなる可能性が大でした。


もう一つ、文章量を減らすための障害がありました。


ビジネス書としての形式をとるならば、各章や節、ひょっとすると単語レベルで解説や注釈が必要だと思っていたからです。

私は、異世界コンサル株式会社を、経営学などの入門書のような位置づけになればいいな、と夢想していましたからーーー今思えば、初めて本を出す人にありがちな誇大妄想に近いものでしたがーーーそうした追記は必須だと考えていたのです。


「なるほど。でもですね、そうすると初期の冒険者パーティー向けの問題解決コンサルは、もう少し増やしたほうがいいと思うんですよね。会社や世界の仕組みとかは、大半の読者には関係ありませんから」

編集の方の指摘は、私には耳の痛いことでした。


確かに、その通りなのです。

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