第18話  ソシャゲのガチャで例えると

とりあえず、ここまでの話で当初知りたかった「なろう書籍化ビジネスをめぐる状況」は理解できたと思います。

以下に、簡単にまとめます。


なろう書籍化ビジネスとは

・通常のラノベ出版と比較して、初速が良くリスクが低い、という特徴がある。

・初速の良さはWeb連載を通じて多くの読者を獲得しているためである。

・リスクの低さとはデータに基づく出版部数の見積もりの正確さであり、在庫リスクの低さである。

・原作を中心としたマルチメディア方式で、当たれば大きなビジネスになる可能性がある。


当初、私はラノベ出版とは「高リスク・低リターンで回転率の激しい忙しい商売」と見ていましたが、編集の方から見える景色としては「低リスクで高リターンが狙えるチャンスの多い商売」と見えていることが理解できました。


ちょっとソシャゲのガチャっぽいですね。

とりあえず引いてみる。当たりが出れば万々歳。でなくても次を引く。

商売の論理としては理解できますが、自分の作品がガチャのように消費されるというのは、少し愉快ではない気分になります。


ですが、これで大手出版社を含め多くの企業が、なろう書籍化ビジネスに参入している理由がわかりました。

出版業界全体で、ガチャを引きにきているわけです。


特に、なろうの場合はデータが整備されている、というのが大きいと思います。

なろうには100万人からの登録者がいるわけで、日々読者の獲得のためにマーケティングとプロモーションが作品に対して行われている状態です。


普通のメーカーでは、消費者向けに製品テストというものを行います。

一方で、出版業界では長く事前消費者テストが行われてきませんでした。

当たるか当たらないかは出してみるまでわからない、編集者の長年の勘に頼ってきたわけです。


ところが、なろうのデータ、という存在がそれを変えました。

ポイントによるランキングに加えて、老若男女のどういった層が読んでいるか、そのあたりも大量のデータさえあれば容易に推測できるでしょう。


これは先のソシャゲガチャで例えると、ガチャのレアを引ける確率がわかっている、という状態に相当します。

勝てそうなゲームであれば、そこに人が殺到するのは当然のことです。


ここまでの記述で誤解して欲しくないのですが、出版とかコンテンツ業というのは、そもそも賭博です。

当たるかどうか、やってみるまでわからない、そういう性質を持つものです。

ですから、出版社を誹謗したり非難する意図は全くありません。


その点だけは、繰り返させていただきます。

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