第3話「選ぶ」か「選ばれる」か

1社から書籍化の打診を請けて半信半疑で予定を調整している時に2社目から書籍化の打診を受けたところまでは、前回書きました。


1社からの打診と2社からの打診というのは、たった1社の違いですが、受け手からすると物凄い違いがあるのですよね。


それは受け手側が「選ばれる立場」から「選ぶ立場」になれる、ということです。

これは「来た話をそのまま受けるしかない」立場との大きな違いです。


会社で発注や購買の経験がある方はご存知かもしれませんが、買い手というのは大変に強い立場です。なにせお金を払うのですから。

多少は理不尽な条件であったとしても、普通は従うしかありません。


ところが別の選択肢があれば、話がまるで違ってきます。

出版という商品は1社に売ればなくなってしまいますから、相手側は選ばれる立場に立たざるを得ないのです。


私の場合は「とりあえず話を聞くだけ聞いてみよう」と心に大きく余裕を持つことができました。


疑心暗鬼になるあまり失念していましたが、確かに先方の条件をまるで聞いていないのです。

そして、2社からの打診となれば「比較」して「検証」することができますし、交渉がうまくいけば「条件の修正」ができるかもしれません。


誤解をしてほしくないのですが、私の場合「条件の修正」というのは「印税を上げてくれ!」だとか「部数を上げて欲しい!」といったものではありませんでした。


今となっては恥ずかしい話ですが、私はライトノベルやエンタメのビジネス流儀や規模感というのが全くわかっておらず、同人誌の延長ぐらいの話だと思っていたのです。


私の先方に期待する条件としては「ビジネス書っぽいもの」を出したいということだけでした。


もともとなろうに投稿した動機が「ビジネス書を書く練習をしたい」というものだったので、ライトノベル作家志望の方が通常持っておられる「書籍化→コミカライズ→アニメ化」という勝利の方程式とはイメージが違ったことが大きかったかもしれません。

(今では違いますよ!コミカライズもアニメ化も歓迎です!)


出版社の方とお会いすることを決めた決定的な動機は、やはり好奇心でしょうか。


「いったい、なろう書籍化というビジネスに何が起きているのか」

「出版社は、なろう小説に何を期待しているのか」

「そもそも自分の小説をなぜ書籍化しようと思ったのか」


などなど、業界の方にインタビューをするための質問事項をいろいろとメモに起こしたのを憶えています。


そうこうしている内に、1社目の書籍化打診をしていただいた出版社の方とお会いする当日になりました。

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