第10話、エピローグ
最後までお読み頂き、有難うございました。
どうしても『 彼女たち 』の事を明記しておきたくなりまして……
この場にて書き記す事、ご容赦願います。
私が創作する作品に登場するキャラクターには、ほとんど、実在するモデル人物がいます。
この作品に登場するメインキャラクター、小岩井 朱美、本田 美希、足立 薫… 勿論、この3人にもモデル人物が実在しました。
物語の中で、事故により命を落としてしまった美希と薫ですが、モデルとなった人物も亡くなっており、実は主人公である『 私 』こと、朱美のモデルとなった人物も、もうこの世にはいません……
美希のモデルとなった女性は、幼稚園の頃から劇団に所属し、子役で人気を集め、プロの劇団員を目指していた3年生。 夏休みに入った7月下旬、図書館から自転車で自宅へ帰る途中、交通事故に遭い、亡くなりました。 物語に登場した『 薫 』とは、同じ中学からの同級生になります。
薫のモデルとなった女性は、吹奏楽部に所属していた3年生。 夏のコンクールを目前にして、水難事故により、この世を去りました。
大会役員に部員たちが懇願し、コンクール当日は、椅子に乗せた遺影でステージに上がりました。
『 美希 』が、2週間ほど前に事故死していた為、もしかして、彼女の後を追っての入水自殺かとも思いましたが、彼女たちの理念から察するに、自殺ではないと私は確信しています。
『 私 』こと、朱美のモデルとなった女性は、先天性の難聴があり、特殊学校に通っていた2年生。 高校卒業後、21歳を前に、悪性の骨肉腫で亡くなりました。
薫のモデルとなった人物が、当時、学校営業をしていた私と、知り合いです。 美希との『 関係 』は、彼女の友人を通して知りました。
朱美のモデルとなった女性とは、2人が亡くなる1年前の夏、ユニセフなどが主催した、高校生ボランティアのイベントで知り合ったとの事…
『 性 』に関しては、単なるレズビアンではなく、物語に登場して来た通り、『 オトナ 』への予行演習として認識していたらしく、彼女たちにしてみれば、真面目な行為だったのでしょう。
でも本当に、段々と相手を好きになり始め、悩んでいたようです…
作品のキーワードに『 百合 』と言う語句を選択させて頂きましたが、そう言った趣味・嗜好をお持ちの方の、心の片隅には、どこかしら美希たちの考え方に通ずるものがあるのではないか… と私は思います。
物語に登場した、いわゆる『 オヤジ狩り 』。
『 朱美 』が亡くなる半年前… 通っていた病院前で久し振りに再会した時、当時の話しの中で聞いていたのですが、実際、最終的に手元にあった現金は、物語に出て来た額を、遥かに超えていました。 あまりに高額だった為、物語の中では過小設定させて頂いた次第です。
「 日本赤十字財団を通し、飢餓に苦しむ世界中の子供たちの為に、全て寄付しました 」
彼女は、笑ってそう言いました。
その眩しい笑顔も、今はもう、この世にはありません。
3人が、共に見つめていた夏… それは、どんな夏だったのでしょうか。
共有した意思、未来、夢……
彼女たちが、この世を去った今では、それを知り得る術はありませんが、現在を生きる人々に、改めて問いたい。
真剣に、未来を考えた事がありますか?
『 結果 』・『 指標 』が、導き出せなくても良いのです。
ふと、自分自身を見つめ直す時間を、ひと時でも良いから、『 持つ事 』が重要なのです。
『 朱美 』が19歳の頃… 手話の資格を取得しようと心に決め、講義を受け始めた時に、私に言いました。
「 あの2人なら、そうしろ、と私に言うわ 」
とある、3人の女子高校生たちの、過ぎ去りし、遠い夏……
それは、永遠に終わる事の無い、永久の夏だったのかもしれません。
彼女たちだけの……
この作品を読んで、あなたの心には、何が残りましたか?
夏川 俊
夏のクラクション 夏川 俊 @natukawa
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