第28話 質疑〈シツギ〉
「いや、ナンパする相手間違ってますよ。俺、男ですし」
「流石に俺でも男をナンパする度胸はねぇよ? とにかく、俺も九十九里浜が好きだから話したいんだって。
相変わらず屈託のない笑みを浮かべている
一度引っかかってしまった言葉には興味が湧いてしまう。それは人間の
「はぁ……まぁ、予定はないし構いませんけど」
「よっしゃあ、決まりだ!」
口元から覗かせる白い歯が、いやに眩しく輝いていた。
* * *
男二人が向かいあって座り、コーヒー片手に談笑する。そんな光景を優雅なティータイムなんて表現してしまえば、世のマダム達が黙っていないだろう。
書店を出た俺と
内装はほぼ全てが木製であり、ニスを塗られたこげ茶色の床は電球色の照明に照らされて綺麗に光っている。
男女のカップルや若い女性で賑わっている店内において、俺たちの存在はかなり浮いているように思えた。なんならイケメン俳優さながらの風貌をした人間が目の前にいるせいで、俺の存在だけが五割増しで浮いているまである。
「いやぁ、松前くんって結構遠慮しないんだな。それを頼むとは思わなかった」
アイスクリームや生クリームといった激甘な商品で構成されたタワーは、見ているだけでも日々の疲れを吹っ飛ばしてくれる。『最高だぁ!』と叫びたくもなってしまう。……何目線で評価してるんだろうな、俺。
「ああ、もちろん自分の分は自分で支払うので、気にしないでください」
「いや、出さなくていいって。その分、面白い話を聞かせてくれよ」
チョコアイスを
『あ、鎖骨……ちょっといいかも』
っは!? な、なんだ!?
口に含んだアイスを思わず吹き出しそうになったけれど、なんとか抑え込めた。持田は一体、どこで何をしているのだろう……。このままテレパシーが続くと危険な感じがするぞ、大丈夫かな。
「
「へ?」
おっと、まずい。持田の言葉に気を取られていたせいで
「や、俺は普通科ですよ。ほんとノーマル過ぎて、超高校生級の普通科生徒なんで」
ホットコーヒーをすすっと一口飲んだ
「ってことはそんなに接点ないよな。どうやって同級生から知り合いまでグレードアップさせたんだ?」
「いや、妹さんも言ってましたけど、同級生のまま変化してないですしこれから変化することもないですよ。というか、同級生も知り合いも同レベルな気が……」
俺の返答に対してピクリとも反応せず、
「知り合い未満の同級生なら学校外で会話することもないだろ」
俺と
「モスドナルドで妹さんがバイトしてたときに偶然出くわして話しただけですよ。彼女、常柑高校の有名人ですからね。『同じ高校なんっすよー』って声をかけてから、ある問題の情報を聞いた、ただそれだけです。まぁ、その時も物凄い勢いで罵倒されましたし、なんならあの日から今日まで、会話するたびに罵倒されてますけど」
俺の言葉を聞いた
「君はあいつの罵りに屈しないんだな」
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