第27話 厄介〈ヤッカイ〉
「松前くん。あなた、私がバイトをしている時間に狙って姿を現しているようだけれど、なに? バイトコスチュームに萌えちゃう系男子? 今すぐに燃えてくれないかしら」
「お、おう、すげぇ暴言だな。
『ストーカーはダメだぞぉ』
持田の無邪気な声音が脳内に響いてくる。妙に持田の言葉が俺たちの会話とシンクロしてんなぁ。俺に対して言ってるんじゃないよね? 猫に対する忠告なんだよね?
というか、会話の最中に持田の声が聞こえてくると収集がつかなくなるんだよなぁ。持田に対して思ったことが口から漏れ出るとおかしなことになりそうだから、細心の注意を払う必要がある。
ちらっと
そのとき、背後から爽やかな男性ボイスが投げかけられた。
「おぉ、
振り向くと、好青年といった感じの大学生風な男が笑顔でこちらに近づいてきていた。ワックスで綺麗に整えられた黒髪はまさにエンジョイ系大学生という印象を受ける。キリッとした目や小さな鼻と唇からはタレントなのかと疑ってしまうほどに整っていて、耳に
俺の目の前で足を止めたチャラ男はなぜか一瞬怪訝な表情を浮かべ、すぐに顔面の筋肉を緩めて口を開く。
「ん?
ちらっと
「ただの同級生よ。この人には冗談のつもりで言ったけれど、あなたは正真正銘、私のバイト中を狙ってやって来た
「ちょちょちょ、そんな怒るなって。……君も同じようなこと言われたんだ?」
チャラ男は俺のほうに顔を向けて、白い歯を覗かせながら微笑んでいる。なに、この人……『君も同類だ?』みたいな顔がものすごく
「えぇ、ついでに焼身自殺もお願いされましたけど」
俺の言葉を聞いたチャラ男は、目を細めて引き気味な表情を浮かべた。
「相変わらず暴言のオンパレードだな……
「だから、友達ではなくてただの同級生……」
「お兄ちゃん、とにかく邪魔だから消えてくれないかしら?」
「お兄ちゃん!?」
妙に親し気な口ぶりだと思っていたけれど、お兄さんだったのか。言われてみれば口元とか鼻の形は似ているかもしれない。けれど、醸し出す雰囲気があまりにも違っていて、素直に驚いた。
『
持田はこの男を見て何を思うのだろうか。目立たない女の子ほど遊び人が好きみたいなことをいつぞやのテレビ番組で見た気がするけれど、その信ぴょう性は皆無だ。
『あ、帰ったら暴走天使ニシジマくん、読もっと』
「どうも、こいつの兄でーす」
持田の危険な香りがするワードと
「ども」
俺は一言だけ呟き、軽く会釈をした。これ以上関わると面倒なことになりそうだな。この辺で消えるとするか。
「じゃあな」
上浮穴に向かって軽く右手を上げ、
写真集コーナーの一角に設けられた専用スペースには、同じ種類の写真集がずらっと平置き状態で並んでいた。表紙には人気メンバーの顔が大きく写っている。
「へぇ、九十九里浜、好きなんだ」
表紙をじっくりと眺めながら高揚感に浸っていると、後ろから声をかけられた。聞き覚えのある声だなと思いながらも、反射的に振り向く。
俺の視界に飛び込んできたのは
……なんでついてきてるんだよ、この人。なに? 磁性体? そうなると、俺も磁石ということになっちゃうんだけど。だとすると、俺はノーマルだからN極だな。
とりあえず気づいていない振りをしてやり過ごそうとしたけれど、
「いやー、あいつには参っちゃうよなぁ。あ、俺さ、まだ一時間ぐらい暇だから、ちょっとカフェで話さない? お兄さんがおごってあげるぜぇ!」
うわー、近年
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