第22話 接触〈セッショク〉
持田はモッスシェイクを
多量の塩分を摂取していくうちに俺の舌は水分不足へと陥り、口の中は完全に砂漠地帯と
「ちょっと水、もらってくるわ」
俺は立ちながら言い、ついでに食べ終わった
「あ、さくやん、わたしのもおねがーい」
「へいへい。持田はいいか?」
「わたしは大丈夫だよー」
おーけーと、棒読みで言い残し、カウンターへと向かう。持田は棒読み使いのスペシャリストだからな。目には目を、棒読みには棒読みを、だ。
店内は相変わらず
手に持っていたトレイとゴミを処理し、
入り口のドアからカウンターまでの広々とした空間には人が一切
俺はカウンター前に立ち、背中を向けている女性店員に声を掛ける。
「すみません」
「っあ、はい!」
店員さんにしては少し冷たさを
「あっ」
こちらに向いている女性の顔を見て、俺は思わず声が漏れてしまった。
わずかに吊り上がった目、小さく形の整った鼻と唇――この
一時間ほど前に職員室で見たときは制服姿の女子高生だったけれど、今この瞬間はバーガー店員に成り代わっている。
「あの、ご注文でしょうか?」
俺の顔を覚えていないのだろうか、振り向いてからここまで一切
「あぁ、すみません。お
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
軽く一礼した
黒い帽子から垂れた黒髪がゆらゆらと左右に揺れている。そんなうしろ姿をぼーっと眺めていると、持田の声が響いてきた。
『んー、休み明けに返事しようかなぁ』
返事……おそらく、今朝のラブレターのことだろう。まぁ、俺には関係ないな。
意味もなく頭上のディスプレイへ視線を移す。
春休み最終日の夕方、渋谷駅ホームにいたあの女性は
「お待たせしました」
俺はトレイを受け取る前に一瞬、うしろの出入り口に視線を向けた。誰一人、お店には入って来る気配がない。順番待ちをしている人もいない。というか、この場には俺以外に
俺はトレイを受け取ると同時に口を開いた。
「あの、俺、
「え? ええ、そうだけど。あなた、誰?」
「誰って……いや、だから、同じ高校に通ってる同級生の
なんで二回も名乗らにゃならんのじゃ、とボソッと呟くと、
「なに? ナンパ師? ストーカー? 店長をお呼びしますので少々お待ちください」
「待て待て待て。そんなに丁寧な口調で店長を召喚されたら、俺がクレーマーみたいになるじゃねぇか」
「
「名前と高校名を
上浮穴は眉根を下げ、真っすぐな視線で俺を見つめてくる。その『え、不審者じゃないの?』みたいな顔、
「とにかく聞きたいことがあるんだけど」
「あなたの目には、アルバイト中の私の姿が映らないのかしら」
暇そうにしている
いつお客さんが入ってくるかもわからない状況で
「たしかに、バイト中だし迷惑だよな。ただ、どうしても聞きたいことがあって……月曜日に学校で話せないか?」
「まぁ、何か事情があるようだし否定する理由はないけれど。あなたの今のセリフ、背筋が凍るぐらいに
「おぉ、あるぜ。お前のその、今にもれいと
なんだ、こいつ。話してるだけ、どっと疲れが押し寄せてくる。話す言葉に面倒くささが含まれているのは東雲と通ずるところがあるな、と一瞬思った。
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