第14話 夕桜〈ユウザクラ〉
「まぁまぁ、二人とも落ち着いてよ。いいと思うよ、部活。わたしはこの三人で作ってみたいかも。こうして集まってるのも何かの縁だと思うし」
相変わらず冷静で、柔らかくて、穏やかな表情をしている。持田の口から飛び出した言葉は俺の全身を包み込み、
けれど、このまま
部活……だと? 面倒ごとには関わらない、これは絶対に譲れないポリシーみたいなものだ。『部活』というイベント発生マシンは、俺に対してなにか恩恵をもたらすのだろうか。いや、ありえない。このやかましい女生徒と冷静沈着な女生徒がキャストなのであれば、オイシー展開なんてものは期待できないだろう。そもそも望んでもいないし実現もされない。
どうしても回避したいという気持ちが、言葉として漏れ出てしまった。
「いや、でも俺は……」
「はーっるるーっん!」
出かかっていた俺の言葉は、
ふわりふわりと揺れる髪がパーソナルスペースに侵入してきて、猫じゃらしのようにくすぐったい。
甘い香りに混じった静かな
「そ、その……部活だったら一緒にいてもおかしくないと思うけど……どうかな?」
夕日に照らされた
このテレパシー現象によって俺と
誤解がさらなる誤解を生み、偽りの真実が独り歩きする――そんな状況を想像すると
「まぁ、近くに
「そっか……よかった」
そう言って、
「
「え? えっとー……それはまだ……」
「あ、決めてないんだ?」
おお、決めてねえのかよ。
心の中で叫んだ俺の言葉は、
「バカなの?」
俺の言葉を聞いた
「なっ! バカじゃないもん、
いや、なんだよその切り返し。
何でも知ってるお姉さんには見えないんだが? 全く強キャラに見えないんだが?
「ま、まぁそれは追々考えるとして……あ! 校門見えてきたよ!」
うまく話を
校門の両側には
ぼんやりと春の趣を感じていると、ふと頭の中に疑問が浮かぶ。
「
「ううん、普通に電車で通学だよ」
意外な回答が飛んできて、一瞬
俺の様子を
「……これから一年間、普通の高校生として楽しみたいしね」
今日一日で植え付けられた
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