第11話 導引〈ドウイン〉
「ちょ、待って待って。逃がさないよ、
うしろを振り返ると、いつもと変わらない表情で
一切揺れることなくただ一点を見つめるその眼球からは、控えめな迫力が感じられた。
「案内なら
率直に思っていたことを尋ねると、
甘い香水の匂いがふわりと漂ってきた。シャンプーの香りも混じっているのだろうか。この世のものとは思えないほどに絶妙な
顔を
「ねぇ……できるだけ一緒にいようよ」
「はぁ!?」
俺の
周りを見渡すと、数人の教師たちがこちらに視線を飛ばしていた。恥ずかしさでじわっと体が熱くなる。
「と、とりあえず出るか」
「そ、そうだね」
俺と
ちらっとうしろを確認すると、
出口のドアを開けると、運動部らしき集団の声が
突然の発言で動揺してしまったけれど、何の事は無い。
あの不可思議な現象が発動する時間を一秒でも減らしたい、ただそれだけのことだろう。
プライバシーが関わってくる以上、
「……この学校、無駄に広いしな。さっさと
ぼそっと呟いた俺の言葉に、持田が
「なんだか……ごめんね?」
どことなく
わずかな上目遣いによってこれまでの
「いや、まぁ大丈夫だ。一人よりは二人のほうが何かと便利だろ」
何が便利なのか自分でもさっぱりわからないけれど、とにかく俺も案内に加わる姿勢を示した。
現象が発動しないギリギリの距離からストーカーまがいなことをするという手も思いついたものの、悪い予感しかしない。ここはおとなしく同行するのが得策だろう。
話の区切りを待っていたかのように
「二人って仲良しなんだね!」
「そんなんじゃねえよ」
「そんなんじゃないよ?」
真実が二倍に増幅されて、
「ハモってるじゃん、仲良し仲良しー」
「そんなことより、そろそろ行こうよ」
心なしか
タッタッタと
「ねぇねぇ、
興味津々な様子で
「イギリスだよ! ロンドン!」
「は!?」
「えぇ!?」
俺と
それは
まじまじと
「あぁ! も、もしかして、
「あれ、はるるん、ママのこと知ってるの?」
「知ってるよ、大女優だもん! す、すごいなぁ……」
はぁああ、と声にならない感嘆が
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