ケーキを焼いたんだよ

「ケーキを焼いたんだよ。食べにこない?」

 やたらに陽気な調子で、ユアは電話をかけてきた。彼女がケーキを焼いたということは、余程いいことがあったか、悪いことがあったかのどちらかだ。私は静かに相槌を打ちながら、様子を見る。

「シフォンケーキだよ。甘ったるいやつじゃないから、安心して。ねぇ、おいでよ」

「そう」私は慎重に言う。「行こうかな」

「来て来て!」

 ユアの声が跳ねるように高くなった。じゃあ待ってるから、と電話が切れる。電話を持ったまま、私はしばらくぼうっとしていた。

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