白がないや

 クレヨンが散らばっていた。折れているものもある。箱はどこだろう、とちょっと周りを見回してみたが、そんなものはなかった。誰だよこんなに散らかして、と溜息混じりに呟いて、赤いクレヨンをまず拾い上げた。クレヨンには紙が巻いてあって、そこに「あか」としるされている。そんなこと、言われなくったって判る。

 シャツの裾を持ち上げて、カンガルーの袋のようにして、そこにクレヨンを放り込んだ。折れた青色を拾って入れる。黄色を拾って入れる。緑色を拾って入れる。橙色を拾って入れる。紫色を拾って入れる。水色を拾って入れる。黄緑色を拾って入れる。茶色を拾って入れる。桃色を拾って入れる。折れた青色の片割れを拾って入れる。黒を拾って入れる。

 あれ。

 白がないや。

 僕は呟いた。

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